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東京地方裁判所 昭和44年(行ウ)126号 判決 1980年2月26日

原告 北辰商品株式会社

被告 日本橋税務署長

主文

一  被告が昭和四一年一〇月二七日付で原告の昭和三八年七月一日から昭和三九年六月三〇日までの事業年度の法人税についてした更正処分のうち所得金額を七一九七万三一四九円として計算した額を超える部分を取り消す。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(当事者の求めた判決)

第一原告

一  被告が昭和四一年一〇月二七日付で原告の昭和三七年七月一日から昭和三八年六月三〇日までの事業年度の法人税についてした更正処分を取り消す。

二  被告が昭和四一年一〇月二七日付で原告の昭和三八年七月一日から昭和三九年六月三〇日までの事業年度の法人税についてした更正処分のうち所得金額を二三七六万七七〇一円として計算した額を超える部分を取り消す。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

第二被告

一  原告の各請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

(当事者の主張)

第一請求原因

一  原告は、東京穀物商品取引所、関門商品取引所等の商品仲買人であつて、各種商品の委託取引を業とする会社であるが、昭和四二年九月四日下関市南部町二二番一七号に本店を有していた同業の北辰商品株式会社を吸収合併し、その財産上の一切の地位を承継した(以下、本件において「原告」というときは、特に断わらない限り下関市に本店を有していた右北辰商品株式会社をいうものとし、区別する必要があるときは、同会社を「下関北辰」といい、合併前の原告(東京都に本社を有する北辰商品株式会社)を「東京北辰」ということにする。)。

二  原告は、昭和三七年七月一日から昭和三八年六月三〇日までの事業年度(以下「昭和三八年六月期」という。)及び昭和三八年七月一日から昭和三九年六月三〇日までの事業年度(以下「昭和三九年六月期」という。)の法人税について次表(一)、(二)のとおり下関税務署長に申告したところ、同署長は、昭和四一年一〇月二七日付で次表(一)、(二)のとおり更正処分及び加算税の賦課決定処分(以下、昭和三八年六月期についての更正処分を「本件更正処分(一)」といい、昭和三九年六月期についての更正処分を「本件更正処分(二)」という。)を行つたので、原告は、広島国税局長に対して審査請求をしたが、前記の合併により納税地が東京都中央区に移転したため、国税通則法七九条五項(昭和四五年法律第八号による改正前のもの)の規定により、本件更正処分(一)、(二)は右納税地を所轄する被告がしたものとみなされ、右審査請求に係る事件も昭和四二年一一月三〇日職権で東京国税局に移送された。その後、原告は、次表(一)、(二)のとおり審査請求の補正をしたが、未だ審査裁決はされていない。

表 (一) 昭和三八年六月期 (単位円。△印は赤字を示す)

区分

年月日

所得金額

法人税額

重加算税額

過少申告加算税額

確定申告

三八、八、三一

一、〇四八、七五五

三四六、〇七〇

修正申告

三八、一一、八

二、一九一、二五七

七〇九、七四〇

更正・賦課決定

四一、一〇、二七

一一、四二一、七八二

四、三八九、三八〇

一、一〇三、七〇〇

審査請求

四一、一一、一四

二、一九一、二五七

七〇九、七四〇

右補正

四四、二、一二

△二、五三〇、九九九

表 (二) 昭和三九年六月期

区分

年月日

所得金額

法人税額

重加算税額

過少申告加算税額

確定申告

三九、八、三一

△六、五一三、四五二

更正・賦課決定

四一、一〇、二七

七三、二一七、九九七

二八、一五九、四七〇

四、四六三、四〇〇

六六三、九五〇

審査請求

四一、一一、一四

△三八、九四六、八一六

右補正

四四、二、一二

二五、七九七、四三八

八、九八六、四三〇

三  しかし、本件更正処分(一)、(二)は、原告の所得金額を過大に認定した違法があり、取消しを免れない。

第二請求原因に対する認否

一  請求原因一、二の事実は認める。

二  同三の主張は争う。

第三被告の主張

一  昭和三八年六月期

1 本訴において被告が主張する原告の昭和三八年六月期の所得金額は次表(三)のとおり一一六〇万一八六八円であり、本件更正処分(一)の認定した金額は、その範囲内である一一四二万一七八二円であるから、本件更正処分(一)は適法である

表 (三) (単位 円)

区分

金額

修正後の申告所得金額

二、一九一、二五七

II

加算

一七、四三一、八九九

1

減価償却費の償却超過額

八五九、八二五

2

商品売買益計上もれ

一四、九九一、二五〇

3

受取利息計上もれ

三一、八二五

4

諸雑費の否認額

三〇〇、〇〇〇

5

受取配当等の益金不算入額

一二、八四七

6

前払金否認当期認容額の否認

九〇〇

7

受取配当等の益金算入額

二一、四二二

8

商品売買益当期認容額の否認

一、二一三、八三〇

III

減算

八、〇二一、二八八

9

営業権の減価償却超過額の当期認容額

二、八三五、〇〇〇

10

委託手数料の認容額

一、八一一、八〇〇

11

建物賃借料の認容額

二一六、〇〇〇

12

営業費の認容額

一、六五二、八二八

13

事業税の認容額

一、五〇五、六六〇

IV

所得金額(I+II-III)

一一、六〇一、八六八

2 本件更正処分(一)の更正項目について、本訴における被告の見解を明らかにすると、次のとおりである。

(一) 減価償却費の償却超過額(表(三)II1) 八五万九八二五円

原告は、店舗改造費八〇万九〇六六円を営繕費及び設備費として、また、絵画及び額縁の取得代金七万円を器具費として損金に計上していたが、右八七万九〇六六円は資本的支出と認められたので、これを否認し、当期分の減価償却費一万九二四一円(明細は別表一のとおりである。)を控除した八五万九八二五円を益金に加算した。

なお、右減価償却費一万九二四一円は、店舗改造費八〇万九〇六六円については、当該建物が木造であるところから固定資産の耐用年数等に関する省令(昭和二六年大蔵省令第五〇号。昭和三九年大蔵省令第二五号による改正前のものをいい、以下「大蔵省令38」という。)別表一に定めるところにより三〇年の耐用年数を適用し、絵画及び額縁の取得価額については、右大蔵省令38別表一の種類「器具及び備品」構造又は用途「前掲のもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの」細目「その他のもの」に該当するので一〇年の耐用年数を適用し、それぞれ定率法により算出したものである。

(二) 商品売買益計上もれ(表(三)II2) 一四九九万一二五〇円

((1)四、八三四、〇〇〇円+(2)一〇、一五七、二五〇円=一四、九九一、二五〇円)

(1) 原告は、当期において河村正美外二〇口の架空顧客口座を用いて商品取引を行い、合計一〇八三万五六〇〇円の商品売買益を得た。その明細は、別表二のとおりである。

ところで、原告は、このうち河村正美外一〇口の架空顧客口座を用いて得た商品売買益六〇〇万一六〇〇円(別表二の1ないし11)を当期の益金に加算して修正申告したにとどまつたので、右正当な商品売買益一〇八三万五六〇〇円と修正申告額六〇〇万一六〇〇円との差額四八三万四〇〇〇円(別表二の12ないし21)を益金に加算した。

(2) 原告は、当期終了後に利益を除外する目的で自己先物取引勘定元帳から利益のでている取引を取り出し、あたかも新居浜営業所の顧客森義和外四名が委託取引を行つたように見せかけ、商品売買益を同人らの委託者未払金に振り替えていたので、右架空の森義和外四口座の委託者未払金一〇一五万七二五〇円(明細は別表三のとおり)を益金に加算した。

(三) 受取利息計上もれ(表(三)II3) 三万一八二五円

原告は、架空名義の顧客口座から顧客に払い出したように仮装して次表(四)のとおり一一三万三〇〇〇円を代表取締役北内正男に支払つていたので、これを右北内正男に対する仮払金と認めた。

表 (四)

支払年月日

架空顧客口座

金額(円)

昭和三七、七、一七

川越勇

八〇、〇〇〇

昭和三八、四、二六

高橋哲次

一八〇、〇〇〇

右同

末森準一

一六四、八〇〇

右同

河村正美

七〇八、二〇〇

合計

一、一三三、〇〇〇

また、原告の簿外仮名預金に次表(五)のとおり三〇万円の入金があつたが、この預入れ資金は、右北内正男からのものと認められたので、これを北内正男からの仮受金と認めた。

表 (五)

入金年月日

簿外仮名預金口座

金額(円)

昭和三八、六、二五

協和銀行下関支店

天野せつ子名義普通預金

一五〇、〇〇〇

昭和三八、六、二九

右同

一五〇、〇〇〇

合計

三〇〇、〇〇〇

そこで、北内正男に対する右仮払金と仮受金との差額については貸付金に相当するので、受け取るべき利息相当額を月末平均残高法(各月末残高×利率)により利率年一割で計算したところ三万一八二五円となつた(計算根拠は次表(六)参照)。

したがつて、右利息相当額三万一八二五円を益金に加算した。

表 (六)

年月

貸付金額(円)

昭和三七年七月末

八〇、〇〇〇

八月末

八〇、〇〇〇

九月末

八〇、〇〇〇

一〇月末

八〇、〇〇〇

一一月末

八〇、〇〇〇

一二月末

八〇、〇〇〇

昭和三八年一月末

八〇、〇〇〇

二月末

八〇、〇〇〇

三月末

八〇、〇〇〇

四月末

一、一三三、〇〇〇

五月末

一、一三三、〇〇〇

六月末

八三三、〇〇〇

合計<ア>

三、八一九、〇〇〇

月末平均残高(<ア>×1/12)三一八、二五〇円

受取利息 三一、八二五円(三一八、二五〇×〇・一)

(四) 諸雑費の否認額(表(三)II4) 三〇万円

原告は、豊橋乾繭取引所へ昭和三八年六月一二日に差し入れた仲買保証金三〇万円を当期の雑費として損金に算入していたが、右仲買保証金は取引所に預託するもので資産に計上すべきものであるから、損金性を否認し益金に加算した。

(五) 受取配当等の益金不算入額(表(三)II5) 一万二八四七円

原告は、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号。以下同じ)九条の六第一項(昭和三七年法律第六七号による改正後のものをいう。以下同じ)により益金に算入されない受取配当等は八万五六九〇円であるところ、誤つて九万八五三七円を益金不算入額として申告調整で減算していたので、差額一万二八四七円を益金に加算した。

(六) 前払金否認当期認容額の否認額(表(三)II6) 九〇〇円

原告は、前期に否認された前払金一五万二〇九〇円を雑収入として公表帳簿に受入れていたので、右金額は当期の認容額として益金から減算されるところ、誤つて一五万二九九〇円を申告調整により減算していたので、差額九〇〇円を益金に加算した。

(七) 受取配当等の益金算入(表(三)II7) 二万一四二二円

租税特別措置法四二条の二第一項(昭和四〇年法律第三六号による改正前のもの)の規定により受取配当等の益金不算入額八万五六九〇円の一〇〇分の二五に相当する二万一四二二円を益金に加算した。

(八) 商品売買益当期認容額の否認(表(三)II8) 一二一万三八三〇円

原告は、修正申告をした前記(二)の河村正美外一〇名の架空名義を用いて得た商品売買益のなかには下関税務署長から更正された昭和三七年一月一日から同年六月三〇日までの事業年度(以下「昭和三七年上半期」という。)の商品売買益一二一万三八三〇円が含まれているとして右金額を益金から減算していたが、そうした事実はなく、益金より減算する理由がないので、否認し益金に加算した。

(九) 営業権の減価償却超過額の当期認容額(表(三)III9) 二八三万五〇〇〇円

((1)二一六、〇〇〇円+(2)二、六一九、〇〇〇円=二、八三五、〇〇〇円)

(1) 原告は、昭和三五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において広島営業所及び大島営業所を開設するにあたり、大一物産より営業権を取得しその債権債務を肩代わりした。右債権債務の肩代わりに伴つて生じた債務超過額五四〇万円(広島営業所分二一六万円、大島営業所分三二四万円)は営業権の対価と認められた。

そこで、下関税務署長は、右事業年度の法人税の更正処分にあたり営業権の対価と認められる右金額から右事業年度分の減価償却費として損金に算入すべき金額を控除した金額を減価償却超過額として益金に加算した。右減価償却費の算出にあたつては、前記大蔵省令38別表九に定めるところにより営業権一〇年の耐用年数を適用し、旧法人税法施行規則(昭和二二年勅令第一一一号。以下同じ)二一条の三(昭和三九年政令第七〇号による改正前のもの。以下同じ)の規定により定額法で残存価額零として算出した。

なお、原告は、下関税務署長の右処分に対してはなんら不服申立てを行つておらず、この処分はそのまま確定している。

したがつて、被告は、右営業権の減価償却超過額として益金に加算した金額のうち以後の各事業年度において損金に算入すべき減価償却費相当額を原告の益金から減算してきたものであり、当期においても広島営業所分の営業権未償却残高のうち二一万六〇〇〇円(取得価額二一六万円の一〇分の一)を当期分の減価償却費として損金に認容した。

(2) 大島営業所分については、同営業所を業績不振のため閉鎖している事実から、営業権の当期末未償却残高二六一万九〇〇〇円全額を当期の損金に認容した。

(一〇) 委託手数料の認容額(表(三)III10) 一八一万一八〇〇円

原告が前記(二)(1)のとおり河村正美外二〇口の架空口座を用いて得た商品売買益一〇八三万五六〇〇円には委託手数料一八一万一八〇〇円が含まれており、かつ、右委託手数料は当期の公表帳簿上利益に計上されているので、損金に認容した。

(一一) 建物賃借料の認容額(表(三)III11) 二一万六〇〇〇円

原告は、原告の代表取締役北内正男及び専務取締役竹藤敦徳が居住していた借上げ社宅の家賃を架空名義口座から支出していたので、損金に認容した。

(一二) 営業費の認容額(表(三)III12) 一六五万二八二八円

原告は、架空名義口座から一六五万二八二八円を支出しているところ、右支出金の支払先は不明であるが、営業費として消費したものと認められたので、損金に認容した。

(一三) 事業税の認容額(表(三)III13) 一五〇万五六六〇円

昭和三七年上半期分の更正による増差所得金額に対する未納事業税は、次のとおりとなるので損金に認めた。

更正後の所得金額 申告所得金額 増差所得金額

一二、九五二、四三一円-四〇五、一三二円=一二、五四七、二九九円

増差所得金額 税率 税額

一二、五四七、二〇〇円×12/100=一、五〇五、六六〇円

二  昭和三九年六月期

1 本訴において被告が主張する原告の昭和三九年六月期の所得金額は次表(七)のとおり七三四六万〇二四四円であり、本件更正処分(二)の認定した金額は、その範囲内である七三二一万七九九七円であるから、本件更正処分(二)は適法である。

表 (七)

(単位円。△印は赤字を示す。)

区分

金額

申告所得金額

△六、五一三、四五二

II

加算

九四、八〇六、一五三

1

減価償却費の償却超過額

七九八、七一三

2

営業権の償却超過額

五、九〇〇、〇〇〇

3

商品売買益計上もれ

四九、二五二、一〇〇

4

給料及び手当の否認額

五〇、〇〇〇

5

受取利息計上もれ

四二、〇六七

6

雑収入計上もれ

三八七、六五六

7

通信費の否認額

三〇、六〇〇

8

諸会費の否認額

三四八、四〇〇

9

諸雑費の否認額

七、〇〇〇、〇〇〇

10

受取利息計上もれ

二、一五五、三八六

11

貸倒損の否認額

四、五七五、五〇〇

12

雑損失の否認額

三、八九四、七〇〇

13

雑損の否認額

一六九、二一三

14

交際費の限度超過額

一四五、六八八

15

受取配当等の益金不算入額

六三、〇〇三

16

営業権の減価償却超過額の当期認容額

四、五〇〇

17

差金勘定の認容額の否認

(商品売買益計上もれ)

一六、〇三二、二七九

18

固定資産認定損の否認額

三、九五六、三四八

III

減算

一四、八三二、四五七

19

減価償却超過額の当期認容額

七二、三九〇

20

委託手数料の認容額

一二、〇九六、五五〇

21

給料及び手当の認容額

五一六、〇〇〇

22

事業税の認容額

一、一〇七、六六〇

23

福利厚生費の認容額

三六〇、二五七

24

商品売買益の認容額

六七九、六〇〇

IV

所得金額(I+II-III)

七三、四六〇、二四四

2 本件更正処分(二)の更正項目について、本訴における被告の見解を明らかにすると、次のとおりである。

(一) 減価償却費の償却超過額(表(七)II1) 七九万八七一三円

原告は、店舗改造費五七万九三三〇円を営繕費として、また、冷房設備費二六万二六〇〇円を器具費として損金に計上していたが、右八四万一九三〇円は資本的支出と認められたのでこれを否認し、当期分の減価償却費四万三二一七円(明細は別表四のとおりである。)を控除した七九万八七一三円を益金に加算した。

なお、右減価償却費四万三二一七円は、店舗改造費については、前記一2(一)と同様に耐用年数三〇年を適用し、また、冷房設備費については、固定資産の耐用年数に関する省令(昭和二六年大蔵省令第五〇号。昭和三九年大蔵省令二五号による改正後のものをいい、以下「大蔵省令39」という。)別表一の定めるところにより、建物附属設備のうち冷房設備(冷凍機の出力が二二キロワツト以下のもの)として一三年の耐用年数を適用し、それぞれ定率法により算出したものである。

(二) 営業権の減価償却超過額(表(七)II2) 五九〇万円

原告が諸会費として損金に計上した神戸穀取仲買人協会(以下「仲買人協会」という。)の臨時特別会費六〇〇万円は、営業権の取得のために支出したものと認められるので、右金額から前記大蔵省令39別表九「無形固定資産の耐用年数」の営業権一〇年の耐用年数を適用して次のとおり計算し、当期分の減価償却費一〇万円を控除した五九〇万円を営業権の減価償却超過額として益金に加算した。

取得価額 償却率 当期の償却額

六、〇〇〇、〇〇〇円×0.1×2/12=一〇〇、〇〇〇円

損金に計上した償却費 当期の償却額 償却超過額

六、〇〇〇、〇〇〇円-一〇〇、〇〇〇円=五、九〇〇、〇〇〇円

被告が右臨時特別会費六〇〇万円を営業権の取得のために支出したものと認めた根拠は、次に述べるとおりである。

神戸穀物商品取引所(以下「取引所」という。)の商品仲買人をもつて組織されている仲買人協会は、建物が増築されたことを契機に右取引所における商品仲買人の数を二五名から二八名に増員するよう運動し、昭和三九年三月ごろこれが実現したが、原告は、右増員を契機に商品仲買人となるため同年五月三〇日仲買人協会に臨時特別会費六〇〇万円を納付し、同協会の推せんを受けて商品仲買人となつたものである。

ところで、商品仲買人となるためには、取引所別に主務省の登録を受けることが条件とされており(商品取引所法(昭和二五年法律第二三九号。昭和四二年法律第九七号による改正前のもの)四一条)、また、右登録を受けるには登録申請書を当該取引所を経由して主務大臣に提出しなければならないとされている(同法四四条一項参照)。そして、取引所は、商品仲買人の数を設定することができることとなつているが(同法四二条の二参照)、その数の増加は通常ほとんど期待できないため、新たに商品仲買人となるには他の仲買人から権利を買い取らなければならない状況にある。かくして、商品仲買人の権利は売買の対象となり、一般にこうした権利の売買のことをシート売買と呼んでいる。

なお、シート売買には商品仲買人の権利のほかに営業体の譲渡を伴うことがあるが、シート売買をするうえでは必須条件ではない。現に仲買人協会は、角石商店からシートの買上げをしたことがあるが(右買上げは営業体の譲渡を伴つていない。)これは、商品仲買人として営業をするため買い上げたのではなく、単にシート売買のあつ旋の一環として商品仲買人の権利のみを角石商店から取得したものであつて、このことからもシート売買は商品仲買人の権利の売買であることが窺えるのである。

ところで、本件においては、他の仲買人の権利を譲り受けるのではなく、商品仲買人の数が増えたことにより新たに商品仲買人になる場合であつたので、原告と旧商品仲買人のシートをめぐる権益との調整を図る必要が生じ、仲買人協会では原告から臨時特別会費という名目でシート料に相当する額として六〇〇万円を徴収することとなり、原告は右金額を納付したのである(なお、仲買人協会は、商品仲買人の申込については取引所へ信用調査等を委嘱し、取引所の内意を聞いたうえで、適当であると認めたときは取引所に推せんしているのであるが、仮に、原告が六〇〇万円を協会に納付しなければ、推せんされないから商品仲買人になれない。)。したがつて、原告が仲買人協会に支出した臨時特別会費六〇〇万円はシート料として徴収されたものである。

商品仲買人の権利は右において述べたような状況にあるので、その実体は営業をなし得るという権利である。権利を譲渡したものは登録から抹消されるので、商品仲買人としての営業ができないことはいうまでもない。そして、商品仲買人として営業をなし得る権利は、それ自体が収益力を生みだす源泉であることが客観的に認められているからこそ一般自由取引市場においてシート料としての価額が形成され売買が行われているのであり、それは、経済上重要な価値を有する事実上の関係ないし事実上の財産たる一種の無形固定資産すなわち営業権と類似した性質をもつているところから営業権として取り扱われるべきである。そして、商品仲買人の権利は、その発生の起因たる規制の継続される限り永続性をもち、機能使用価値ないしは交換価値の消耗ということは考えられず、むしろ稀少性から価値増加の可能性を内蔵しているものであり、独立資産として個々の評価により取引されることなどから資産としての性格機能を具えているといえるので、会計的側面からは貸借対照表の資産の部に計上すべきものである。

したがつて、原告が仲買人協会に支出した臨時特別会費六〇〇万円は、これにより商品仲買人として営業をなし得るという権利を取得したのであるから、営業権の取得のために支出したものというべきである。ちなみに法人税法上の取扱いとしては、繊維工業における精紡機の登録権、清酒製造業のいわゆる造石権、許可漁業の出漁権、タクシー業のナンバー権のように法令の規定、行政官庁の指導等による規制に基づく登録、認可、割当等の権利を取得する場合の当該権利を取得するのに支出する費用は、営業権に該当するものとして取り扱われている。

(三) 商品売買益計上もれ(表(七)II3) 四九二五万二一〇〇円

原告が当期において原田久男外四六口の架空顧客口座を用いて商品取引を行つて得た商品売買益合計四九二五万二一〇〇円が計上もれとなつていたので、益金に加算した。

(四) 給料及び手当の否認額(表(七)II4) 五万円

原告は、昭和三八年一二月二七日に大上司に立替金として支出した五万円を昭和三九年一月一〇日に給料手当に振り替え損金に計上していたが、右支出は架空であるので否認した。

(五) 受取利息計上もれ(表(七)II5) 四万二〇六七円

簿外の普通預金、定期預金及び通知預金に対する受取利息四万二〇六七円が計上もれになつていたので、益金に加算した。

(六) 雑収入計上もれ(表(七)II6) 三八万七六五六円

((1)五一、八四三円+(2)一六、二四八円+(3)三一九、五六五円=三八七、六五六円)

(1) 原告が協和銀行下関支店の丸上親和会末藤博一名義普通預金(以下「末藤博一名義普通預金」という。)を昭和三八年一二月二五日に解約した五万一八四三円を同日原告の簿外仮名預金である協和銀行下関支店の石川和枝名義普通預金に入金していたが、右金額は雑収入と認められるので益金に加算した。被告が右五万一八四三円を雑収入と認定した根拠は、次のとおりである。

原告の簿外仮名預金である石川和枝名義普通預金は、原告が簿外としていた委託証券会社からのリベート収入を預け入れ従業員のリクリエーシヨン費用として費消するために設定された預金であるから、右五万一八四三円は末藤博一名義の普通預金から石川和枝名義普通預金へ振替入金された時点において原告に帰属したものと認められたので、雑収入計上もれと認定したものである。

(2) 広島支店の顧客岡山正外六名の未払金合計一万六二四八円は、支払う必要がなくなつたため整理して、原告の簿外仮名預金である今井静夫名義普通預金に昭和三八年一〇月二二日に入金していたが、雑収入に計上されていなかつたので益金に加算した。

(3) 原告は、有価証券の処分について委託している証券会社(大阪屋証券福岡支店、岡三証券下関支店及び観証証券下関営業所)から支払手数料に対するリベート三一万九五六五円を受け取り、原告の簿外仮名預金である石川和枝名義普通預金に入金していたが、雑収入に計上していなかつたので益金に加算した。

(七) 通信費の否認額(表(七)II7) 三万〇六〇〇円

原告は、昭和三八年九月二三日に旭川出張所の電話加入設備料三万〇六〇〇円を通信費として損金に計上していたが、右金額は電話加入権の取得費と認められ資産に計上すべきものであるから、損金性を否認し益金に加算した。

(八) 諸会費の否認額(表(七)II8) 三四万八四〇〇円

原告は、函館海産物取引所に昭和三九年二月一〇日納付した加入金三四万八四〇〇円を諸会費として損金に計上していたが、右加入金は出資金と認められ資産に計上すべきものであるから、損金性を否認し益金に加算した。

(九) 諸雑費の否認額(表(七)II9) 七〇〇万円

原告は、衆議院議員であつた大上司に対し仮払税金名義で昭和三八年一〇月八日三〇〇万円、同月一七日四〇〇万円、合計七〇〇万円を支出し、昭和三九年六月三〇日の決算整理仕訳において仮払税金から諸雑費に科目振替を行い、当期の損金に計上していたが、右七〇〇万円は東京北辰の設立運動の謝礼として支出されたものであり、原告が別法人の費用を負担すべきいわれはないので、損金であることを否認し益金に加算した。

(一〇) 受取利息計上もれ(表(七)II10) 二一五万五三八六円

原告が簿外資金から代表取締役北内正男に対し四七〇〇万三七一五円(当期中の発生額四五八七万〇七一五円)を払出していたので、これを北内正男に対する仮払金と認めた。また、簿外預金等に入金されている金額のうち一五一一万三二〇八円(当期中の発生額一四八一万三二〇八円)は北内正男から受け入れたものと認められたので、これを北内正男からの仮受金と認めた(明細は別表五及び六のとおりである。)。

そこで、北内正男に対する仮払金と仮受金との差額は貸付金に相当するので、受け取るべき利息相当額を月末平均残高法(各月末残高×利率)により利率年一割で計算したところ二一五万五三八六円となつた(計算根拠は次表(八)参照)。

したがつて、右利息相当額二一五万五三八六円を益金に加算した。

表 (八)

年月

貸付金額(円)

昭和三八年七月末

一〇、九三五、九一〇

八月末

一三、一六一、二七七

九月末

一三、一六一、二七七

一〇月末

一四、九七一、二七七

一一月末

一五、七七一、二七七

一二月末

二二、五〇三、七一五

昭和三九年一月末

二二、七二一、二七五

二月末

二二、四二一、二七五

三月末

二二、三二七、五二五

四月末

三四、三九〇、五〇七

五月末

三四、三九〇、五〇七

六月末

三一、八九〇、五〇七

合計<ア>

二五八、六四六、三二九

月末平均残高(<ア>×1/12) 二一、五五三、八六〇円

受取利息 二、一五五、三八六円(二一、五五三、八六〇円×〇・一)

(一一) 貸倒損の否認額(表(七)II11) 四五七万五五〇〇円

原告は、函館営業所の顧客河村沢治の委託者未収金四五七万五五〇〇円を債権放棄したとして貸倒損に計上していたが、河村は函館トヨペツト株式会社の代表取締役で個人資産が相当あり、債権放棄をすべき理由がないばかりか、債権放棄をした事実も認められなかつたので、右貸倒損を否認し、益金に加算した。

(一二) 雑損失の否認額(表(七)II12) 三八九万四七〇〇円

原告は、元函館営業所長矢野富士雄に対する貸付金三八九万四七〇〇円を同人の所在不明を理由に回収不能とみて当期の雑損失として損金に計上していた。

しかし、矢野は原告が右貸付金を雑損失として損金に計上した直後の昭和三九年一〇月ころには音信があつて所在不明ではなかつたし、また、同人は当時函館営業所の所長という重職にあり、従業員を指揮監督する立場にあつたことからしても、原告は、債権の回収にあたつては十分な手段を講ずべきであつたにもかかわらず、これを怠つていたのであるから、少なくとも、当期において右貸付金を損金に計上するのは時期尚早であつたというべきである。よつて、原告の右損金計上を否認して益金に加算した。

(一三) 雑損の否認(表(七)II13) 一六万九二一三円

((1)一〇〇、〇〇〇円+(2)四二、二一三円+(3)二七、〇〇〇円=一六九、二一三円)

(1) 原告は、神戸穀物取引所へ昭和三九年五月二八日に納付した加入金一〇万円を雑損として損金に算入していた。

しかしながら、右取引所の定款一三四条によれば、会員加入の承認を受けたものは出資金とともに右取引所が総会の決議により定めた金額の加入金を納入しなければならないことになつている。そして、右加入金の金額は、当該新会員が加入する前の右取引所の純資産額から出資金の額を控除した金額(利益準備金、任意積立金及び資本準備金に相当する金額)を旧会員の有する全出資口数で除して得た金額によつて算定されることになつており、右加入金は旧会員と新会員の持分の調整を図るためのものである。

したがつて、右加入金は、当然に出資金の取得価額に算入されるべきものであるから、損金性を否認し益金に加算した。

ちなみに、右加入金の金額は右取引所の純資産額の増加に伴つて次第に増額され現在では一〇〇万円となつているのである。また、右取引所は会員の納入した加入金を利益金に算入することなく、資本金の一部として経理しており、会員が脱会した場合には、脱会者に出資金とともに加入金相当額を払い戻している。

(2) 原告は、昭和三九年六月二六日に電信電話債権の売却損四万二二一三円を雑損として損金に計上していたが、右売却損は電話加入権の取得にあるので資産に計上すべきであるから、損金性を否認し益金に加算した。

(3) 原告は、昭和三八年九月三〇日に登記過怠による過料二万七〇〇〇円を雑損として損金に計上していたが、これは所得の計算上損金に算入されないので、益金に加算した。

(一四) 交際費限度超過額(表(七)II14) 一四万五六八八円

原告が会議費及び諸雑費として損金に計上した金額のうち別表七、八記載の支出合計七二万八四三八円は交際費と認められたので、これを原告が申告した交際費の額六六九万八三八七円に加算して、租税特別措置法六二条(昭和四〇年法律第三二号による改正前のもの)に規定するところに従い交際費の限度超過額を計算すると、八一万六八一〇円となる。そこで、被告は、右計算により得た交際費の限度超過額八一万六八一〇円と原告が申告した交際費限度超過額六七万一一二二円との差額一四万五六八八円を益金に加算した。

(一五) 受取配当等の益金不算入額(表(七)II15) 六万三〇〇三円

原告は、旧法人税法九条の六第一項の規定により益金に算入されない受取配当等は一万三五〇五円であるのに誤つて七万六五〇八円を益金不算入額として申告調整で益金から減算していたので、差額六万三〇〇三円を益金に加算した。

(一六) 営業権の減価償却超過額の当期認容額(表(七)II16) 四五〇〇円

前記一2(九)(1)で述べた広島営業所の営業権の当期未償却残高のうち当期分の減価償却費の範囲額は二一万六〇〇〇円(取得価額二一六万円の一〇分の一)であるところ、原告は誤つて二二万〇五〇〇円を申告調整で益金から減算していたので、差額四五〇〇円を益金に加算した。

(一七) 差金勘定認容額の否認額(表(七)II17) 一六〇三万二二七九円

原告は、差金勘定について値洗いした際発覚した簿外差金六〇一五万〇八二〇円のうち、五六六三万一九二〇円はすでに課税済である本件係争事業年度の直前三事業年度(昭和三五年一月一日から同年一二月三一日まで、昭和三六年一月一日から同年一二月三一日まで、昭和三七年一月一日から同年六月三〇日までの各事業年度。以下「過去三事業年度」という。)の発生に係る商品売買益であるとしてこれを公表帳簿に受け入れ、残り三五一万八九〇〇円を当期の商品売買益として申告すると同時に、重複課税になるとして五六六三万一九二〇円を所得金額から差し引いた。しかし、すでに課税済として差金勘定の受け入れ認容の対象となるのは四〇五九万九六四一円にすぎず、右五六六三万一九二〇円との差額一六〇三万二二七九円は、原告が自発的に申告した三五一万八九〇〇円と同様に当期の商品売買益からなるものであり、計上もれと認められたので、益金に加算した。

被告が右一六〇三万二二七九円を商品売買益計上もれと認定した根拠は、次のとおりである。

(1) 商品売買益の計算は、差金勘定の処理と密接に関連しているので、まずこの両者の関係について説明する。

およそ、商品取引には委託者が仲買人を通じて行う取引と仲買人自らが行う取引とがあるが、これを法律的にみると、取引所における商品取引の当事者は仲買人と取引所であつて、もとより差金の決済はこの両当事者間で行われ、委託者はこれに介在しない仕組みとなつている。

そこで、仲買人と委託者との取引関係をみると、委託者の取引の申込みがなされてから手仕舞(申込みの売買と反対の売買申込みをすることによつて当該取引を清算すること)されるまでの間、右取引は差金の決済上次に述べる仲買人の自己取引となんら区分されることなくいわば混然一体として取り扱われていて未だ両者の間にはなんら債権債務の確定をみないのであつて、手仕舞がなされることにより仲買人ははじめて当初売買申込みをした時の値段と手仕舞をした時の値段との差額(以下「清算差額」という。)に相当する債権債務を保有するに至る。

他方、仲買人の自己の取引商品は、仲買人が委託者の取引商品とともに一括して取引所で売買をし、取引所との間で毎日差金の決済を行う。しかしながら、この差金決済は取引所の定めた業務規程に基づき行われるものであつていわば仮の決済にすぎず、その売買損益は手仕舞行為によつてはじめて確定することは右の委託者と仲買人との取引の場合と同様である。この場合においては、右の清算差額が商品売買損益の額となる。

差金の決済の方法は、委託者の取引商品と自己の取引商品(以下、前者を「委託者建玉」といい、後者を「自己建玉」といい、両者を一括して単に「建玉」という。)とを区分せずに毎日一括して計算されて現金で受払いされる。差金は約定差金と帳入差金とに区別されるが、前者は取引所の一営業日(暦日)中に数回開設される商品市場毎に成立した値段(これを約定値段といい、いわゆる商品相場を意味し、この約定値段が清算差額の基礎となる。)と取引所の整理値段(これを帳入値段といい、単一帳入値段制下では一営業日の全取引をこの値段に引き直して取引所は建玉の整理記帳を行う。)との差額をいい、後者は前日の帳入値段と当日の帳入値段との差額をいう。そして、この差金の累計額と清算差額とは一致するのである。

以上にみたとおり、仲買人は、商品相場の値動きに対応して日々取引所から差金を受け取り、あるいは支払うこととなるが、それは手仕舞がなされない限り仮の受払金として評価されるにとどまる。そして、手仕舞がなされると、委託者建玉に係るそれは委託者に対する未払金・未収金に、自己建玉に係るそれは商品売買損益にそれぞれ変容する。

仲買人の右の会計処理は次のように行われる。

ア 取引所に支払うべき差金は、未払金勘定の貸方と差金勘定の借方にそれぞれ記帳される。

イ 取引所から受取るべき差金は、未収金勘定の借方と差金勘定の貸方にそれぞれ記帳される。

ウ 損勘定の委託者建玉に係る清算差額(この清算差額は委託者先物取引勘定元帳から計算される当初約定値段と手仕舞時の約定値段の差額であり、仲買人がすでに取引所と決済して支払済となつている差金と対応する。)は、委託者未収金勘定の借方と差金勘定の貸方にそれぞれ記帳される。

エ 益勘定の委託者建玉に係る清算差額(ウと同様に計算され、仲買人が取引所に対してすでに受取済の差金に対応する。)は、委託者未払金勘定の貸方と差金勘定の借方にそれぞれ記帳される。

オ 損勘定の自己建玉に係る清算差額(これは自己先物取引勘定元帳からウと同様に計算され、取引所に対してすでに支払済の差金に対応する。)は、商品売買損益勘定の借方と差金勘定の貸方にそれぞれ計上される。

カ 益勘定の自己建玉に係る清算差額(オと同様に計算され、取引所に対してすでに受取済の差金に対応する。)は、商品売買損益勘定の貸方と差金勘定の借方にそれぞれ計上される。

右にみたとおり、差金勘定には取引所と日々決済した差金(右のア及びイの差金。以下「発生差金」という。)と清算差額としての差金(右のウないしカの差金。以下「清算差金」という。)が計上される。清算差金は前示のとおり当初売買申込時の約定値段と手仕舞時の約定値段との差額に相当し、それは当該取引に係る発生差金の累計額と同額であつて、しかも発生差金の累計額と反対側の貸借に計上されるから、手仕舞いされた建玉に係る差金勘定は貸借が一致して残高は零となる(この点、清算差金は発生差金を商品売買益等に価値を移動させる内部取引によつて計上される差金であることから当然である。)。

このように、商品取引に係る売買損益の計算は差金勘定の処理と密接に関連している。なお、現実問題として、仲買人は多数の委託者建玉と自己建玉とを有し、取引の手仕舞は各自の相場感によつて行われるから、その時機は一定しない。したがつて、決算期末にすべての右取引が手仕舞われることは通常あり得ないから、差金勘定の残高が零になることはない。そして、この残高は清算がなされていない差金、すなわち期末の建玉について取引所と日々決済した差金の累計額を意味している。

(2) 原告は、昭和三九年六月二七日差金勘定について値洗い(手仕舞のされていない建玉を対象として個々の取引に係る当初売買申込時の約定値段と値洗い日の帳入値段との差額を計算するもので、正しく記帳されていれば、その総額は差金勘定の残高と一致する。)をしたところ、差金勘定の帳簿上の借方残高は四二一万三二八九円であつたのに対し、値洗い総額は六四三六万四一〇九円であり、貸方が六〇一五万〇八二〇円過大であつた。このことは、すなわち原告が自己の取引を手仕舞つた際借方に計上すべきであつた差金勘定をそのまま貸方に計上していたことを意味し、原告は、自己の取引に係る商品売買益六〇一五万〇八二〇円を差金勘定の貸方に計上したままにすることによつて、右利益を社内に留保していたのである(一種の架空負債を計上して利益を隠ぺいしたのと同様の結果となる。)。

なお、原告の差金帳簿には自己分の差金と委託者分の差金が混然と記帳されているので、商品売買益を計算する場合には委託者分の清算差金の計上もれを当然考慮しなければならないが、委託者の清算差金の計上もれは委託者に対する債権債務の計上もれに外ならず、この点は仲買人業務の遂行上最も神経を使う箇所であるから、通常はこの処理を誤ることはあり得ないことである。

ちなみに、仲買人と委託者との関係を律した受託契約準則では、個々の取引毎にその内容を通知し、手仕舞の際は遅滞なく清算する義務が仲買人に課せられており、更に、委託者の損失が証拠金の許容額を超えると仲買人の資産状態を悪化させ、ひいては仲買人の倒産を招くおそれもあるために、この点は取引所及び農林省が行う監査の重点項目となつている。

したがつて、前記六〇一五万〇八二〇円は、原告の自己取引に係る商品売買益ということができる。

(3) ところで、原告は、過去三事業年度中において、自己名義で先物取引をしたり架空の顧客名義を用いて自己先物取引を行つて得た商品売買益五六六三万一九二〇円(以下、「過年度操作差金」という。)を「差金勘定」として不正に操作することによつて(差金勘定の貸方金額を過大に計上すること)除外していたことが、下関税務署長の調査によつて発覚し更正されていた。そこで、原告は、前記値洗いによつて明らかとなつた簿外差金六〇一五万〇八二〇円は右課税済の五六六三万一九二〇円がこれに当たるとし、これを昭和三九年六月三〇日の期末において

借方 差金勘定 五六六三万一九二〇円

貸方 雑益   五六六三万一九二〇円

の仕訳で当期の公表帳簿に受け入れ、重複課税になるとして、所得金額から右五六六三万一九二〇円を差し引いて申告するとともに、右五六六三万一九二〇円の受入れによつてもなお三五一万八九〇〇円の差額ができるところから、右差額は当期分の商品売買益であるとして、これを自己加算して申告した。要するに、原告は、右二法により値洗いによつて明らかとなつた簿外差金六〇一五万〇八二〇円を公表帳簿に受け入れたのである。

(4) しかしながら、原告は、過年度操作差金五六六三万一九二〇円のうち一六〇三万二二七九円については昭和三八年六月期にすでに取り崩していたのである。すなわち、原告は、過年度操作差金のうち一六〇三万二二七九円を払い出すために昭和三七年九月二七日

借方

差金勘定   一六〇三万二二七九円

委託者未収金  一六二万四八〇〇円

貸方

委託者証拠金 一五四四万三八四九円

委託者未払金  二二一万三二三〇円

という振替仕訳を行つてこれを取り崩したうえ、架空の預り金等に振替支出していたので、昭和三八年六月期末における過年度操作差金は、五六六三万一九二〇円ではなく、これから右取り崩した一六〇三万二二七九円を差し引いた四〇五九万九六四一円であつたのである。したがつて、原告が昭和三九年六月期末において公表帳簿に受入れ可能な過年度操作差金は四〇五九万九六四一円にすぎず、原告の過年度操作差金の公表帳簿受入れは一六〇三万二二七九円過大であつたといわなければならない。

(5) そうすると、昭和三九年六月二七日の値洗いによつて明らかとなつた簿外差金六〇一五万〇八二〇円からすでに課税済として控除できる過年度操作差金四〇五九万九六四一円を差し引いた一九五五万一一七九円は、原告の自己取引による当期の商品売買益というべきところ、原告が自発的に申告したのは三五一万八九〇〇円にすぎないので、残り一六〇三万二二七九円は当期の商品売買益に加算されるべきである。

なお、原告が値洗いを行つたのは昭和三九年六月二七日であり、その結果は当期末(同月三〇日)現在のものではないが、これについては、後記(二四)で調整している。

(一八) 固定資産認定損の否認額(表(七)II18) 三九五万六三四八円

原告は、当期の申告調整において固定資産認定損三九五万六三四八円を益金から減算していたが、減算すべき理由は認められないので、否認し益金に加算した。

被告が右固定資産認定損三九五万六三四八円を認めなかつた根拠は、次のとおりである。

(1) 原告は、原告の各支店、営業所が保有する車両運搬具及び什器備品の期末現在における数量及びその評価額を各支店営業所より報告させ、右報告書に記載された評価額の合計金額と総勘定元帳の当該勘定に記載された金額との差額を確定決算に計上せず、当期の法人税申告にあたり申告書別表二において固定資産認定損として益金から減算している。しかし、原告は、右報告書の内容の正確性についてなんら検討することなく各支店営業所の報告をうのみにして右計算を行い、また、その差額の生じた原因についてもなんら検討を行つていないのであるから、原告がした固定資産認定損の算定は極めて正確性に乏しく、また根拠のないものであり、原告の申告を認容することはできない。

(2) 仮に、原告の右申告が評価損の損金算入を意味するとしても、原告は、これについて帳簿価額を減額していないから、旧法人税法施行規則一七条の二(昭和三七年政令第九五号による改正後のもの)の規定により、その損金算入は許されないものである。すなわち、旧法人税法施行規則一七条の二第三項は、固定資産の価額が一年以上にわたる遊休状態があつたこと及び災害等により著しい損傷を被つたこと等の同項各号に掲げる事実に基因して低下した場合には、その帳簿価額を減額することを条件として、当該減額した金額を損金に算入することを認めている。しかし、原告は、当期中に取得した車両の取得価額を故なく低廉に評価し、その評価額と帳簿価額との差額三八二万九五三〇円を申告減算しているのみならず、残余の申告減算額一二万六八四八円についても、その申告減算をするについて滅失、損壊等の格別の事由は存在していないのであるが、仮に、申告減算について同規則一七条の二第三項各号に定める事由が存在していたとしても、原告は、単に申告書上で損金に算入しているのみであつて、帳簿価額を減額していないのであるから、原告が申告した固定資産認定損三九五万六三四八円を損金に算入することはできないのである。

(一九) 減価償却超過額の当期認容額(表(七)III19) 七万二三九〇円

昭和三八年六月期に営繕費又は器具費として損金に計上したなかに資本的支出となるものがあり、減価償却費の償却超過額八五万九八二五円を前記一2(一)において益金に加算したが、右金額のうち当期の損金に算入すべき減価償却費七万二三九〇円を損金に認容した。

(二〇) 委託手数料の認容額(表(七)III20) 一二〇九万六五五〇円

被告が前記二2(三)において商品売買益計上もれとして益金に加算した四九二五万二一〇〇円には、委託手数料一二〇九万六五五〇円が含まれており、かつ、右委託手数料は当期の公表帳簿上利益に計上されているので、損金に認めた。

(二一) 給与及び手当の認容額(表(七)III21) 五一万六〇〇〇円

原告が架空名義口座から昭和三八年一二月一一日払い出した五一万六〇〇〇円は、従業員の給与及び手当として支給しているものと認められたので、損金に認めた。

(二二) 事業税の認容額(表(七)III22) 一一〇万七六六〇円

昭和三八年六月期分の更正による増差所得金額に対する未納事業税額は、次のとおりとなるので損金に認めた。

更正後の所得金額 申告所得金額 増差所得金額

一一、四二一、七八二円-二、一九一、二五七円=九、二三〇、五二五円

増差所得金額 税率 税額

九、二三〇、五〇〇円×12/100=一、一〇七、六六〇円

(二三) 福利厚生費の認容額(表(七)III23) 三六万〇二五七円

((1)三五二、二五七円+(2)八、〇〇〇円=三六〇、二五七円)

(1) 原告が当期中において原告の簿外仮名預金である石川和枝名義普通預金から払い出した三五万二二五七円は、原告の従業員リクリエーシヨン費用にあてたと認められたので、福利厚生費として損金に認めた(明細は別表九のとおりである。)。

(2) 原告は、北内正男が居住していた借上げ社宅の昭和三八年七月分家賃八〇〇〇円を架空名義口座から同年六月二八日に払い出して支払つているので、右八〇〇〇円を福利厚生費として損金に認めた。

(二四) 商品売買益の認容額(表(七)III24) 六七万九六〇〇円

昭和三九年六月三〇日現在の差金勘定残高は、値洗いの結果六三六八万四五〇九円が正当であるところ、原告は誤つて六四三六万四一〇九円と算定し、総勘定元帳残高六〇八四万五二〇九円との差額三五一万八九〇〇円を自主的に商品売買益に加算しているが、加算すべき金額は二八三万九三〇〇円が正当と認められるので、差額六七万九六〇〇円を損金に認めた。

第四被告の主張に対する認否

一  被告の主張一1は争う。

二  被告の主張一2の(一)ないし(一三)について

1 (一)は、店舗改造費の耐用年数、したがつてその減価償却費の額を争い、その余は認める。

2 (二)のうち(1)は、原告が河村正美外二〇口の架空顧客口座を用いて商品取引をしたこと、このうち河村正美外一〇口の架空顧客口座による商品売買益を修正申告したことは認めるが、修正申告の額は争う。当期における河村正美外一〇口による商品売買益が六〇〇万一六〇〇円であることは認める。

(二)のうち(2)は、原告が森義和外四名の架空名義を用いて同人らがあたかも委託取引をしたかのように見せかけ、別表三の架空の委託者未払金一〇一五万七二五〇円を計上していたことは認めるが、その余は争う。

3 (三)は、原告の架空名義の顧客口座から表(四)のとおりの出金があり、また、原告の簿外仮名預金に表(五)のとおりの入金のあつたことは認めるが、その余は争う。

4 (四)ないし(七)は認める。

5 (八)は、原告が被告主張のような理由で一二一万三八三〇円を益金から減算したことは認めるが、その余は争う。

6 (九)のうち(1)は、減価償却費の金額を争うが、その余は認め、同(2)は認める。

7 (一〇)は、一八一万一八〇〇円のうち河村正美外一〇口座の商品売買益に係る委託手数料五一万三八〇〇円について争う。

8 (一一)ないし(一三)は認める。

三  被告の主張二1は争う。

四  被告の主張二2の(一)ないし(二四)について

1 (一)は、耐用年数、したがつて減価償却費の額を争い、その余は認める。

2 (二)は、原告が昭和三九年五月三〇日仲買人協会に臨時特別会費六〇〇万円を納付し、これを損金に計上したこと、取引所の商品仲買人の定数が三名増員され、これを契機に原告が商品仲買人となつたこと、原告が商品仲買人となるについて仲買人協会の推せんを受けたこと、商品取引所法によつて商品仲買人となるための手続が被告主張のとおりとなつていることは認めるが、その余は争う。

3 (三)ないし(五)は認める。

4 (六)のうち(1)は、被告主張のような出入金のあつたことは認めるが、原告の雑収入であることは争う。同(2)(3)は認める。

5 (七)は認める。

6 (八)は、加入金が出資金として資産に計上すべきものであるとの主張を争い、その余は認める。

7 (九)は、大上司に対して支払つた七〇〇万円が東京北辰の設立運動の謝礼の趣旨であること及び右支出が損金とならないことを争い、その余は認める。

8 (一〇)は、別表五の番号1、6、7、9ないし12、18、19が北内正男に対する仮払金であること及び別表六の番号1、3、4、7ないし9、14、16、18ないし20が同人からの仮受金であることは認める(ただし、別表六の番号9、16、18については数額の点は争う。)が、その余は争う。

9 (一一)は、河村に対して債権放棄をすべき理由がなく、債権放棄をした事実もなかつたとの点を争い、その余は認める。

10 (一二)は、原告が矢野に対する貸付金三八九万四七〇〇円を同人の所在不明を理由に当期の損失として損金に計上したことは認めるが、その余は争う。

11 (一三)のうち(1)は、原告が神戸穀物取引所に納付した加入金一〇万円の雑損として損金に算入したことは認めるが、これが損金でないとの主張は争う。同(2)(3)は認める。

12 (一四)は、原告が別表七、八記載の支出を会議費、諸雑費として損金に計上したことは認めるが、右支出が交際費に該当するとの主張は争う。

13 (一五)、(一六)は認める。

14 (一七)は、原告がすでに課税済の過年度操作差金五六六三万一九二〇円を当期において公表帳簿に受け入れたこと、三五一万八九〇〇円を当期の商品売買益として申告したこと、五六六三万一九二〇円を申告所得額から差し引いたこと、昭和三九年六月二七日に行つた値洗い総額が六四三六万四一〇九円であつたことは認めるが、右過年度操作差金五六六三万一九二〇円のうち一六〇三万二二七九円を取り崩し、当期において公表帳簿に受け入れ認容の対象となるのは四〇五九万九六四一円であること、原告が公表帳簿に受け入れた五六六三万一九二〇円のうち一六〇三万二二七九円が当期の商品売買益であること、値洗い日(昭和三九年六月二七日)における差金勘定の帳簿上の借方残高が四二一万三二八九円であつたことは争う。

15 (一八)は、原告が当期において固定資産認定損三九五万六三四八円を益金から減算していることは認めるが、その余は争う。

16 (一九)は争う。

17 (二〇)、(二一)は認める。

18 (二二)は争う。

19 (二三)、(二四)は認める。

第五原告の反論と本件各係争事業年度における簿外経費

一  本件更正処分(一)に対する反論

1 減価償却費の償却超過額(第三の一2(一))

被告は、店舗改造費について三〇年の耐用年数を適用しているが、原告が改造を加えた店舗は、いずれも他人より賃借したものであつて、自己の所有する固定資産ではない。したがつて、その耐用年数は、店舗の賃貸借期間、改造の内容等を勘案して、これを算出すべきである。

2 商品売買益計上もれ(第三の一2(二))

(一) 被告は、原告が修正申告をした河村正美外一〇口座による商品売買益の額は六〇〇万一六〇〇円であると主張するが、原告のした修正申告額は六三五万九七〇〇円である。すなわち、架空名義河村正美外一〇口座による商品売買益は、当期だけでなく昭和三七年上半期にも存在し、その内訳は、別表一〇のとおりであるが、これを要約すると、次のとおりである。

昭和三七年上半期

商品売買益 二四九万四六〇〇円

委託手数料 一六二万二七〇〇円

純利益    八七万一九〇〇円

昭和三八年六月期

商品売買益 六〇〇万一六〇〇円

委託手数料  五一万三八〇〇円

純利益   五四八万七八〇〇円

ところで、下関税務署長は、昭和三八年五月三〇日昭和三七年上半期の右純利益を一二一万三八三〇円と更正したので、原告は、これに対し異議申立てをしたが、当期の申告時期と重なつたため、下関税務署長の指導により昭和三七年上半期と当期の河村正美外一〇口座に係る商品売買純利益の合計六三五万九七〇〇円(八七万一九〇〇円+五四八万七八〇〇円)を公表帳簿に受け入れたうえ、これを当期の商品売買益として修正申告し、同時に昭和三七年上半期の更正額一二一万三八三〇円を所得金額から減算した(なお、下関税務署長は、昭和三九年四月二四日付で昭和三七年上半期の右利益を一五二万七五三〇円と再更正した。)。

以上のとおりであつて、原告が修正申告した額は六三五万九七〇〇円が正しく、しかも、右修正申告額は委託手数料を控除した純利益の合計額であるから、被告のように委託手数料を含んだ商品売買益(別表二の金額)から原告の修正申告額を差し引いても、正しい商品売買益計上もれを算出することはできない。また、原告のした修正申告額の中には、前記のとおり下関税務署長が更正、再更正をした昭和三七年上半期の利益が含まれているところ、本件更正処分(一)は、これについてなんの配慮もしておらず、右部分に関しては重複課税となる。

(二) 原告が新居浜営業所の架空顧客森義和外四名の口座に委託者未払金を計上したのは、原告は本件係争事業年度前に係る滞納法人税等が七〇〇〇万円余りあり、このため下関税務署長から差押えの執行を受ける慮れがあつたので、営業資金を確保する目的で、商品取引所における取引は存在しないのに、あたかも新居浜営業所の顧客森義和外四名が取引を委託して利益を得たかのように仮装し、架空の委託者未払金(負債)を計上して資金を疎開させたものであるが、それと同時に委託者未払金に見合う架空の資産(差金勘定)を計上しているので、損益には関係なく、商品売買益を除外したことにはならない。

なお、架空の資産(差金勘定)は、過去にさかのぼつて帳簿を操作したので、現時点では、その計上の具体的な時期、内容を明らかにすることはできない。

3 受取利息計上もれ(第三の一2(三))

仮に、被告主張のような北内正男に対する仮払金、仮受金があり、原告に受け取るべき利息があつたとしてもその計算は、月末平均残高法ではなく、より正確な積数計算法(元本×日数×日歩)によるべきである。

4 商品売買益当期認容額の否認(第三の一2(八))

前記2(一)のとおり、原告が修正申告した河村正美外一〇口座に係る売買益六三五万九七〇〇円の中には昭和三七年上半期の売買益が含まれていたのであるから、これを当期において減算すべきである。

5 委託手数料の認容額(第三の一2(一〇))

前記2(一)のとおり、原告が修正申告した河村正美外一〇口座に係る売買益は、委託手数料五一万三八〇〇円を控除した純利益であるから、改めて委託手数料を損金として認容する必要はない。

二  昭和三八年六月期における簿外経費

原告は、当期において次のとおり簿外資金から経費として二二七万八五三二円を支出しているので、これを損金として認めるべきである。

1 役員賞与等 一五〇万円

原告は、架空顧客口座から一五〇万円(川野義正 六〇万円、刈谷寿夫 三五万円、川越勇 二〇万円、末森準一 一一八万円、高橋哲次 一七万円)を払い出し、昭和三七年一二月二八日左記のとおり役員報酬又は使用人賞与を支出した。

a 北内正男(代表取締役) 六〇万円

b 竹藤敦徳(専務取締役) 三五万円

c 大山茂行(常務取締役) 二〇万円

d 具塚谷恒良(部長)   一八万円

e 江角高明(部長)    一七万円

なお、aないしeは役員報酬、deは使用人賞与である。

2 歩合的交際費 三九万二〇三二円

原告は、各営業所長に対し昭和三七年七月より昭和三八年四月まで委託取引証拠金預額の増加部分の一パーセントを各営業所の顧客及び外務員等に対する交際費として簿外資金より支出した。

なお、右交際費は、営業所長に手渡すものであり、個人で費消しても、また、営業社員又は顧客の接待に費消しても、原告の関知するところではない。

3 委託取引における委託手数料戻し 三八万六五〇〇円

原告は、仲買人大津屋より先物商品取引の注文を受け、委託手数料を収受したが、当時、仲買人又は会員が他店で委託商品取引をした場合、その手数料は半額でよいとする申合わせないし商慣習があつたので、昭和三八年六月七日右手数料の半額三八万六五〇〇円を大津屋に返還した。

なお、右の経理は、昭和三八年六月七日公表帳簿より江角高明に対する仮払金名目で大津屋に支払い、これを同月二九日原告の簿外仮名預金(保田隆司名義)からの出金によつて充当した。

三  本件更正処分(二)に対する反論

1 減価償却費の償却超過額(第三の二2(一))

原告の反論は、前記一1と同様である。

2 営業権の減価償却超過額(第三の二2(二))

原告が仲買人協会に臨時特別会費六〇〇万円を納付したのは、当時、同協会が財政難であつたことから、これを救うために六〇〇万円を納付すれば、原告が商品仲買人にするについて同協会の推せんを得られ、事実上容易に商品仲買人の登録を受けられると判断したからである。したがつて、右六〇〇万円は、原告の事業拡張の一環としての経費であり、旧法人税法施行規則二一条の九第二項(昭和三九年政令第七〇号による改正後のもの)に規定する開発費に当たり、繰延費用としてその全額を当期の損金として処理できるものである。

被告は、右六〇〇万円を営業権取得のための支出であると主張するが、これが失当であることは、次のことからも明らかである。

(一) 仲買人協会は、会員相互の親睦を図り、商品仲買人の利益を増進し、かつ、取引所の推進力となつてその繁盛を図ることを目的とする団体にすぎず、新たに商品仲買人となろうとするものが主務省の登録を受けるについてなんらの権限も有しないのであるから、商品仲買人になるに際し、仲買人協会に臨時特別会費を納付しても、それをもつて営業権取得のための支出であるということはできない。また、仲買人協会は、前記臨時特別会費を損益計算書の収益欄に計上しており、後日原告が同協会を脱会しても返還されることはない。

(二) 一般に営業権とは、超過収益力、すなわち当該企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊な製造技術及び特殊な取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した他の企業を上廻る企業収益力と解されており、これが税法上問題となるのは、企業が合併する場合、企業が他の企業の営業の全部又は一部を買収する場合、個人企業から法人組織に組織が変更される場合であり、いわゆる企業体を承継する場合である。したがつて、本件のように原始的に商品仲買人の地位を取得した場合においては、営業権の取得ということは問題となる余地はない。しかも、営業権は前記のとおり超過収益力を基礎とするのに対し、商品仲買人たる地位そのものは価値を生み出すものではないから、商品仲買人たる地位を営業権と評価することもできないといわなければならない。

3 雑収入計上もれ(第三の二2(六)(1))

末藤博一名義普通預金を解約して原告の簿外仮名預金である石川和枝名義普通預金に受け入れた五万一八四三円は、原告の従業員の積立金であつて、原告に帰属するものではない。すなわち、原告の従業員がその親睦を図る目的で一定額の金額を定期的に拠出し、これを右末藤博一名義普通預金に預け入れ、必要に応じて支出していたが、末藤博一はすでに退社してかなりの年月が経過したので、預金口座を整理する意味で石川和枝名義預金に一時受け入れたもので、右五万一八四三円はその後従業員の親睦のために支出している。

4 諸会費の否認額(第三の二2(八))

原告が函館海産物取引所に納付した三四万八四〇〇円は、同取引所における商品取引の違約損失補償準備金に充てるために支出されたものであるが、損害保険の保険料に相当するものであるから、損金として処理できるものであり、税務当局も従来からかかる取扱いを認めていた。また、当時の租税特別措置法も、かかる支出を損金として処理しうることを是認している。

5 諸雑費の否認額(第三の二2(九))

大上司に対する七〇〇万円は、原告の滞納税の免除、延期等の交渉、運動に対する謝礼、運動費として支払つたものである。すなわち、原告は、過去三事業年度において約七〇〇〇万円の税を滞納していたところ、当時、原告は資金ぐりが苦しく、右税を一度に完納することが困難であり、下関税務署長から取引所に預託している売買証拠金等を差押えられる危険性があつたが、もし、そうした事態となれば、原告の倒産は必至であつた。それで、原告は、当時衆議院議員であつた大上司に右滞納税の免除、延期を税務当局に交渉、運動してもらうように依頼したところ、それが一応効を奏したので、運動費、謝礼という趣旨で滞納税の一割にあたる七〇〇万円を大上に支払つたものである。

6 受取利息計上もれ(第三の二2(一〇))

(一) 仮払金(別表五)について

別表五の番号2ないし5、8、13ないし17、20ないし28は、次に述べるとおり原告のために支出費消されたもので、北内正男に対する仮払いではない。

(1) 別表五の番号2 (八〇〇万円)

原告の東京北辰に対する出資金である。もつとも、簿外資金より支出した関係上、株式の名義は原告の顧問税理士久富寿一としたが、真の株主は原告である。

(2) 同3(一〇万二九一〇円)

原告の銀行からの借入金に対する利息に充てたものである。

(3) 同4(二〇〇万円)

右(1)と同様である。

(4) 同5(五七万六六六七円)

原告が川棚観光ゴルフ場の会員権を取得したときの代金である。

(5) 同8(二一万円)

原告代表者北内正男が会社の事業活動の一環として欧州等の商品取引所の視察旅行をした際、原告が同人に支払つた日当、諸費用である。

(6) 同13(二五万円)

原告の役員等の旅行にあたり、その交通費、宿泊費等として支出したものであり、福利厚生費に該当する。

(7) 同14(一二一万三三九八円)

一七万円は原告の歩合的交際費であり、残り一〇四万三三九八円は専務取締役竹藤敦徳に対する役員賞与の一部である。

(8) 同15(一〇九万三〇四〇円)

東京北辰の設立費用である。

(9) 同16(一〇〇万円)

原告の代表取締役北内正男に対する簿外の役員賞与である。

(10) 同17(一七〇万一〇〇〇円)

一五〇万円は右(9)と同様であり、残り二〇万一〇〇〇円は右(6)と同様である。

(11) 同20(三五〇万円)

原告の子会社である日産商品株式会社(以下「日産商品」という。)に対する原告の出資金一五〇〇万円の一部である。

(12) 同21(七〇万円)

出金の事実はない。

(13) 同22(二五〇万円)

右(11)と同様である。

(14) 同23(三〇〇万円)

原告の子会社である北辰貿易株式会社(以下「北辰貿易」という。)に対する原告の出資金である。

(15) 同24ないし28(二八万七〇〇〇円、四四一万三〇〇〇円、五三〇万円、三八〇万円、二〇万円、以上合計一四〇〇万円)

五〇〇万円は前記竹藤敦徳に対する退職金であり、残り九〇〇万円は左(11)(13)と同様である。

(二) 仮受金(別表六)について

別表六の番号2、5、6、10ないし、13、15、17は、次に述べるとおり北内正男からの仮受金ではなく、また、同9、16、18は同人からの仮受金であるものの、その金額が真実の仮受額より過少であり、更に同表に掲記されていない同人からの仮受金も存在する。

(1) 別表六の番号2(一〇万円)

現金勘定を一時操作して勝又実外三名の証拠金に入金しておいたものを昭和三八年一二月三日原告の今井静夫名義普通預金より出金して埋め合わせたものである。

(2) 同5(三〇万円)

弘中勝義取引口座への入金は、原告の畑一名義普通預金より昭和三九年二月四日二〇万円、同月五日一〇万円とそれぞれ出金したものである。

(3) 同6(三万〇五〇〇円)

中村光政取引口座への入金は、昭和三九年三月七日宮崎正輝取引口座より出金した一八万五二五〇円のうちの三万〇五〇〇円によるものである。

(4) 同10(五万円)

昭和三九年三月三〇日前田利雄名義普通預金より出金し、翌三一日同預金に戻し入れたもので、北内正男と関係がない。

(5) 同11(五〇万円)

昭和三九年三月二六日玉井隆義取引口座より出金した一二〇万円のうち五〇万円を田村名義の仮受金として入金したものである。

(6) 同12(二〇万円)

右(5)の一二〇万円のうち二〇万円を重松名義の仮受金として入金したものである。

(7) 同13(一八万七〇〇〇円)

昭和三九年三月一七日中村隆志外二名の取引口座より出金したもののうち一八万七〇〇〇円を簿外で保管し、同年四月二日浜田秀男の取引口座に入金したものである。

(8) 同15(一一万五〇〇〇円)

昭和三九年四月八日高橋守外二名の取引口座より出金したものを井上操名義普通預金に受け入れたものである。

(9) 同17(一万一七〇〇円)

井上操名義普通預金から出金したものを篠田一英名義普通預金に受け入れたものである。

(10) 同9(三五〇万円)、同16(三〇〇万円)、同18(一六二万二七一八円)

別表六によれば、番号9、18の仮受金額は三五〇万円、一六二万二七一八円となつているが、実際の仮受金額は、番号9が三九〇万円、番号18が三一五万円である。また、番号16は、昭和三九年四月一三日に三〇〇万円の仮受金となつているが、正しくは同月一一日三五〇万円の仮受けがあつた。

(11) 別表六に掲記されていない仮受金

原告は、山本勝也より原告の株式を買い受けるにあたり、北内正男から昭和三九年六月二七日二五〇万円を仮受けている。

(三) 利息の計算方法について

被告は、利息の計算方法につき月末平均残高法を用いているが、より正確な積数計算法を採用すべきである。

7 貸倒損の否認額(第三の二2(二))

原告が河村に対して債権放棄をしたのは、河村との間で委託取引上の紛議(河村の主張するところによれば、函館営業所長矢野富士雄が河村に無断で取引を行つた、という。)が生じ、調査するもその真偽を断定できなかつたことから、今後の取引も考慮して、紛議を解決するため委託者未収金を請求しないこととしたものであつて、本来なら雑損として処理すべきであつたところ、経理上の不手際からこれを貸倒損として処理したものであるが、いずれにしても損金処理は妥当である。

8 雑損失の否認(第三の二2(三))

矢野に対する三八九万四七〇〇円は、貸付金ではなく、矢野が顧客との間で起こした取引上の紛議から回収することが困難となつた委託者未収金を矢野に対する立替金という形で経理していたものであるが、同人が所在不明となり回収不能となつたため雑損失として処理したものである。なお、矢野は当時資産収入がまつたくなかつた。被告は、昭和三九年一〇月当時音信があつて所在不明ではなかつたと主張しているが、これは、矢野が松山営業所勤務当時紛議を生じさせた顧客から、原告がその責任を追及されたので、やむなく矢野の名義で見舞金を顧客に送金したにすぎない。

仮に、貸付金であつたとしても、原告は、矢野が退職する際支給すべき退職金があつたので、これで右貸付金を精算しており、いずれにしても、損金性を失わないというべきである。

9 差金勘定認容額の否認額(第三の二2(一七))

(一) 原告は、設立当初より経理担当者の経験不足、未熟のため立替金、仮払金、仮受金、車両什器備品、取引税の予納及び電話加入権等につき差額が生じた場合、各勘定科目別の原因調査を怠り、差金勘定でこれを安易に調整していたことから、昭和三九年六月二七日差金について値洗いをした結果、値洗差金と帳簿差金とが大幅に食い違つた。

そこで、他の勘定科目についても当期末において棚卸方式によつてそれぞれ資産、負債、損益等を確定して調整したほか、過年度操作差金五六六三万一九二〇円を公表帳簿に受け入れ、更に売買損益についても銘柄、限月毎に自己取引の売買益を検討し、これを総勘定元帳の損益勘定と対比した結果、三五一万八九〇〇円の利益計上もれが判明したので、これも公表帳簿に受け入れたところ、値洗差金とほぼ一致した。しかし、過年度操作差金はすでに課税済であり、これを公表帳簿に受け入れれば、二重課税となるので、申告所得金額から五六六三万一九二〇円を減算した。

(二) 被告は、原告が昭和三八年六月期に過年度操作差金のうち一六〇三万二二七九円を取り崩し他の資産に振り替えたと主張するが、そうした事実はない。差金を取り崩すということは、当該差金を公表帳簿に受け入れるということであるが、総勘定元帳の差金勘定にはそうした記帳は見当らないのである。

仮に、被告主張のように簿外差金を他の資産に振り替えたとしても、原告がすでに課税済の過年度操作差金五六六三万一九二〇円を雑益として公表帳簿に受け入れた以上、右差金全額につき減額されるべきである。また、原告が値洗いをしたのは昭和三九年六月二七日がはじめてであり、それ以前の昭和三七年上半期の差金残高及び昭和三八年六月期中の簿外利益は確定せずに不明であつたのであるから、被告主張の取り崩された差金がはたして過年度操作差金であつたのか、将又それ以外の過年度分の差金であつたのか、あるいは昭和三八年六月期の利益であつたのか明らかでない。

(三) 被告は、原告が公表帳簿に受け入れた五六六三万一九二〇円のうち一六〇三万二二七九円は当期の商品売買益であると主張するが、仮に右一六〇三万二二七九円が過年度操作差金に含まれないものであつたとしても、被告の右利益の算定方法を前提とすれば、前記のとおり昭和三七年上半期及び昭和三八年六月期の簿外差金は確定していないのであるから、被告主張の一六〇三万二二七九円の商品売買益が当期のみの発生に係るものであるということはできない。

(四) 被告は、原告が昭和三九年六月二七日に行つた差金の値洗いの結果(六四三六万四一〇九円)が正しいものとして商品売買益を算出しているが、実は、値洗いの結果は次のとおり正確でなく、被告の計算は前提において誤つている。

(1) 値洗いは、昭和三九年六月二七日現在のものであり、当期末(同月三〇日)のものではない。被告は、その間のずれの調整として六七万九六〇〇円を減算しているが、これは単に取引所の約定差金、帳入差金のみを修正したにすぎず、建玉の異動による委託者差金、自己差金については全然考慮していない。

(2) 右値洗いは、計算等の誤りがあり、後日値洗いしなおしたところ、三五九万一〇〇〇円過大であつた。

(五) 原告は、三五一万八九〇〇円を当期の商品売買益として自己加算して申告したが、右金額を申告したのは、被告主張のように総勘定元帳の差金勘定の帳尻を合わせるためではなく、総勘定元帳の売買損益と自己売買損益表とを一致させるためにしたものである。

ところで、これについても後日検討したところ、自己売買損益表の小豆、手芒、でんぷんの期首繰越金額に誤りがあり、二六一万五五〇〇円過大であつたことが明らかとなつた。したがつて、前記(四)と相俟つて、原告は、商品売買益について過大な申告をしていたこととなる。

(六) 被告は、当期末において、差金勘定の帳簿上の借方残高は四二一万三二八九円であつたと主張しているが、総勘定元帳にはそのような記載はなく、被告主張は失当である。

四  昭和三九年六月期における簿外経費

原告は、昭和三九年六月期において次のとおり簿外資金から経費として一七一八万二二一〇円を支出しているので、これを損金として認めるべきである。

1 北辰貿易設立費用      五〇万円

原告は、昭和三九年四月一四日資本金の全額を出資して北辰貿易を設立したが、その設立のために必要な費用として五〇万円を支出した。

2 リクリエーシヨン費  三万八〇〇〇円

原告の簿外預金である石川和枝名義普通預金から昭和三八年一〇月一一日三万八〇〇〇円を引き出し、原告の従業員のリクリエーシヨン費の一部に充当して使用した。

3 借入利息等     一〇万二九一〇円

原告は、東京北辰の出資金の一部に充てるため協和銀行下関支店から八〇〇万円を借り受けたが、その借入金の利息等の支払いのために昭和三八年七月二二日一〇万二九一〇円を支出した。

4 欧州旅行費         二一万円

原告の代表取締役北内正男が全国仲買人連合会主催による欧州諸国における商品取引所の視察旅行に行つた際、その費用の一部として二一万円を支出した。

5 役員旅行及び会議費 四五万一〇〇〇円

原告の役員会議を金沢等で役員及びその家族の年末の慰安旅行も兼ねて行つたが、その費用の一部として四五万一〇〇〇円を支出した。

6 オーストラリア旅行費    四〇万円

原告の専務取締役大山茂行が全国仲買人連合会主催によるオーストラリアにおける商品取引所等の視察旅行に行つた際、その費用の一部として四〇万円を昭和三九年四月二日支出した。

7 送金料           六〇〇円

日産商品の出資金に充てるため佐々木英雄外二名の名義で第一銀行下関支店から同行兜町支店高橋宏誌口座に一四〇〇万円を送金したが、その送金料として六〇〇円を支出した。

なお、原告が同行を通じて送金する場合、無料の取扱いを受けていたが、仮名送金であつたので、送金料を支払つた。

8 東京北辰設立費用 二八五万八〇四〇円

原告は、東京に支店を開設するため運動していたが、多額の滞納税があつたため認可を得ることが困難と判り、急拠別会社を設立することとし、昭和三八年七月二五日東京北辰を設立した。そして、その設立費用(その大部分は当初の東京支店開設費用)の一部として、同年六月五日より設立までの間、二八五万八〇四〇円を支出した。

9 役員賞与         五二八万円

a 北内正男(代表取締役) 二五〇万円

b 竹藤敦徳(専務取締役) 一三〇万円

c 大山茂行(常務取締役)  九六万円

d 木塚昭義(取締役部長)  三二万円

e 高橋宏誌(取締役部長)  二〇万円

ただし、aないしcは役員報酬、deは使用人賞与であるが、支払日は、aが昭和三八年一二月二七日、bないしeは同月二五日である。

10 歩合的交際費   二〇四万一六六〇円

昭和三八年六月期と同様の趣旨(前記二2参照)で、各営業所長に対し歩合的方式による交際費として二〇四万一六六〇円を支払つた。

11 給与            三〇万円

原告の専務取締役であつた竹藤敦徳は、日産商品の代表者として出向するため原告を昭和三九年二月末日で退社したが、日産商品の設立が同年四月であつたので、空白となつた三月分の給与として三〇万円を竹藤に支払つた。

12 退職金          五〇〇万円

前記のとおり竹藤敦徳が原告を退社したので、退職金として五〇〇万円を支払つた。

第六「原告の反論と本件各係争事業年度における簿外経費」に対する認否と被告の反論

一  原告の「本件更正処分(一)に対する反論」について

1 減価償却費の償却超過額(第五の一1)

原告は、改造を加えた店舗が他人から賃借したものであることを理由に、被告の主張する耐用年数を争つているが、大量回帰的に行われる課税処分においては、個々の資本的支出に基づく事業用資産の効用持続期間の測定をすることは困難であり、また、恣意による減価償却の弊害を防止し、もつて租税負担の公平を担保する意味からも、特段の事情のない限り大蔵省令の定める耐用年数を一律に適用し、その期間に応じて費用配分を行うことが最も事柄に適した方法である。そこで、これを本件について見ると、原告の会計帳簿等からは耐用年数の一律適用を否定すべき特段の事情は窺い知ることはできず、また、本件調査を担当した税務職員が原告の当時の経理部長田村健二に資本的支出に関する資料を示して検討させたところ、同人も被告の主張する耐用年数を認めたのであつて、原告の主張は失当である。

2 商品売買益計上もれ(第五の一2)

(一) 昭和三七年上半期における河村正美外一〇口の架空口座に係る商品売買による利益についてその額を下関税務署長が当初一二一万三八三〇円と更正し、後に一五二万七五三〇円と再更正したことは認めるが、原告が当期において修正申告をした右架空名義による商品売買益の中に昭和三七年上半期の利益が含まれていること、右修正申告額が委託手数料を控除した純利益であることは争う。

仮に、原告が修正申告した河村正美外一〇名名義による商品売買益六〇〇万一六〇〇円の中に昭和三七年上半期の利益一五二万七五三〇円が含まれていたとしても、被告の計算の結果にはなんらの消長もきたすものではない。

すなわち、被告が主張している商品売買益計上もれ四八三万四〇〇〇円は、当期の商品売買益計上もれ河村正美外二〇口の合計一〇八三万五六〇〇円から原告が修正申告した六〇〇万一六〇〇円を差し引いて計算したものであるから、仮に、原告が主張するように当期において修正申告した河村正美外一〇口の商品売買益六〇〇万一六〇〇円のなかに昭和三七年上半期の商品売買益一五二万七五三〇円が含まれておれば、右被告の計算において差し引く金額は四四七万四〇七〇円(六〇〇万一六〇〇円―一五二万七五三〇円=四四七万四〇七〇円)となり、差し引く金額が一五二万七五三〇円減少することから当期の商品売買益計上もれとして加算する金額は一五二万七五三〇円増加し六三六万一五三〇円となる。したがつて、原告が主張する右事実があつたとしても、右事由により所得の計算にはなんら消長をきたさないのである。

(二) 森義和外四名の口座に架空の委託者未払金に見合う架空の資産(差金勘定)を計上したこと及び架空の委託者未払金を計上した目的が資金を疎開させることにあつたことは争う。

3 受取利息計上もれ(第五の一3)

原告は、認定利息の計算方法について月末平均残高法でなく積数計算法を採用すべきと主張するが、法人税法上、法人が役員に対して無償又は低率で金銭を貸し付けている場合において、その事業年度中に金銭の貸付がひん繁に行われ貸付金額が一定していないときは、当該事業年度中の各月末における貸付金の額の平均額を常時貸し付けていたものとして、その利息の額を計算することができるとされている(「国税庁長官通達昭和三四年直法一―一五〇」の「三七」参照)ので、被告は、本件貸付がひん繁に起きていることから月末平均残高法により認定利息の計算をしたものである。

二  原告の主張する「昭和三八年六月期における簿外経費」について

この点に関する原告の主張は、次に述べるとおり失当である。

1 役員賞与(第五の二1)

原告が昭和三七年一二月二八日にその主張の架空名義口座から一五〇万円を払い出したことは認めるが、右金額は次に述べるとおり代表者北内正男に対する役員賞与として支出されたものである。

すなわち、右一五〇万円は、通常賞与が支給される時期に出金されているところ、北内正男以外に賞与が支給されたと認められるものはなんらなかつたので、原告が同人のワンマン会社であることからも、同人に右金額の賞与が支給されたと認定したものである。ところで、法人税法上、役員賞与は原則として損金に算入しないこととされているのであるが、例外的に使用人としての職務を有する役員(以下「使用人兼務役員」という。)について、使用人としての職務に対する賞与として相当と認められる部分についてのみこれを損金として経理したときは、損金に算入することが認められている(旧法人税法施行規則一〇条の四(昭和三四年政令第八六号による追加後のもの。以下同じ。)参照)。しかし、代表取締役、専務取締役、常務取締役等の役員はいかなる場合も使用人兼務役員とはされない(同規則一〇条の三第六項(昭和三四年政令第八六号による追加後のもの。以下同じ。)参照)。

以上の規定から明らかなとおり、北内正男は代表取締役であるから使用人兼務役員に当たらず、同人に支給された役員賞与は損金として認める余地のないものである。

また、仮に、原告が主張するように北内正男外四名に一五〇万円を支給していたとしても、次に述べる理由により法人税法上損金とは認められない。

原告は、架空名義口座から北内正男、竹藤敦徳及び大山茂行の各役員に支給した金額は役員報酬であつたと主張している。しかしながら、右金額は、昭和三七年一二月二八日に一度に支給されているのであるから給料又は報酬としての性格を有するのではなく臨時的に支給された給与、すなわち賞与に当たり(旧法人税法施行規則一〇条の三第三項(昭和三四年政令第八六号による追加後のもの。以下同じ。)及び四項(昭和三四年政令第三二二号による改正後のもの。以下同じ。)参照)、右金額が役員賞与ではなく役員報酬に当たるとの原告の主張は失当である。次に、北内正男は代表取締役、竹藤敦徳は専務取締役、また大山茂行は常務取締役であるので、右各役員に原告主張額が役員賞与として支給されていたとしても、右役員賞与は旧法人税法施行規則一〇条の三第六項及び一〇条の四の規定により損金として認められない。

原告は、使用人賞与として部長貝塚谷恒良に一八万円、部長江角高明に一七万円を簿外から支給したので損金に認めるべきであると主張している。しかしながら、貝塚谷恒良は、原告の取締役であるから、同人に支給していたとしても、それは役員賞与である。また、仮に、貝塚谷恒良が使用人兼務役員に該当するとしても、同人らに対する支給は別途利益から簿外で支給されたものであり、損金経理がないのであるから、旧法人税法施行規則一〇条の四により損金に認められないのである。更に、江角高明の賞与についても、別途利益から簿外で支給したものであるから、いわゆる隠れた利益処分と認められる。しかして、法人税法上使用人に対して支給した賞与は、法人が損金に計上した場合においてのみ損金算入が認められるのであつて、右のような経理がなされていない場合には、これを損金に算入することは許されないものである(「国税庁長官通達昭和二五年直法一―一〇〇」の「二六四」及び「二六六」参照)。したがつて、原告が江角高明に対して別途利益から簿外で賞与を支給したと主張している一七万円は、たとえそのような事実があつたとしても、損金とは認められない。

2 歩合的交際費(第五の二2)

原告がその主張のような支出をしたことは否認するが、仮に右支出があつたとしても、次の理由により当該支出は損金として認められるものではない。

一般に、特定の支出が法人の交際費とされるには、法人の経理方法のいかんにかかわらず、それが実際に得意先、仕入先等事業に関係のある者に対し接待、きよう応、慰安、贈答等のため支出されることが必要である(昭和三九年法律第二四号による改正前の租税特別措置法六二条一項、三項及び「国税庁長官通達昭和二九年直法一―八五」の「二九」参照)。したがつて、原告主張のような基準で算定された金額が各営業所長に支出されていたとしても、その時点で交際費となるものではなく、実際に得意先等に対し接待、きよう応等のため支出され、かつ、その使途が明らかであるときにはじめて交際費となるものである。

ところで、原告が各営業所長に対して支出した歩合的交際費が具体的にどのように使用されたかはなんら明らかにされていないし、それを立証する証ひよう書類もない。したがつて、原告主張の歩合的交際費の支出については、たとえそのような支出があつたとしても、これを経費として認めるいわれはないのである。

3 委託取引における委託手数料戻し(第五の二3)

原告が委託手数料の半額を大津屋に戻したことは、否認する。

三  原告の「本件更正処分(二)に対する反論」について

1 減価償却費の償却超過額(第五の三1)

これについての被告の反論は、前記一1と同様である。

2 営業権の減価償却超過額(第五の三2)

仲買人協会に支出した六〇〇万円が繰延費用であるとの主張は争う。

3 雑収入計上もれ(第五の三3)

末藤博一名義普通預金に関する原告の主張は争う。

仮に、原告主張のように五万一八四三円が従業員の積立金であり、これを一時石川和枝名義預金に受け入れたにすぎないとしても、被告は、第三の二2(二三)のとおり同預金からの出金(別表九参照)を原告の福利厚生費として認めているので、原告の主張は失当である。

4 諸会費の否認額(第五の三4)

三四万八四〇〇円が函館海産物取引所における商品取引の違約損失補償準備金に充てるため支出されたものであることは認めるが、原告の引用する租税特別措置法は右準備金を徴収した取引所における税務の取扱いを規定したものであるし、右加入金は取引所を脱退するときに返還されるのであるから、原告の主張は失当である。

5 諸雑費の否認額(第五の三5)

当時原告が税を滞納していたことは認めるが、大上司に対して支払つた七〇〇万円が原告の主張する趣旨であつたことは否認する。

仮に、右七〇〇万円の支出目的が東京北辰の設立運動以外にもあつたとすれば、それは、特定の目的のために支出されたものではないから、政治献金というべきである。そうすると、政治献金は旧法人税法九条三項(昭和二五年法律第七二号による改正後のもの。以下同じ。)所定の寄付金に当たり、旧法人税法施行規則七条一項(昭和三六年政令第六三号による改正後のもの。以下同じ。)の規定により寄付金の損金算入限度額を計算すると、九八万〇五六三円のみが損金となるので、これを差し引いた六〇一万九四三六円は所得の計算上損金に算入されないこととなる。

6 受取利息計上もれ(第五の三6)

(一) 仮払金(別表五)について

別表五のうち原告が争う部分について、被告が北内正男に対する仮払いと認めた根拠を述べれば、次のとおりである。

(1) 別表五の番号2(八〇〇万円)

原告の簿外預金(保田隆司名義)から昭和三八年七月九日引き出された八〇〇万円は、北内正男の無記名定期預金(北内印)にされている。なお、右無記名定期預金は、北内が東京北辰の出資金一〇〇〇万円の払込みに充てるため同人名義で協和銀行下関支店から借り入れた八〇〇万円の担保に供されている。

(2) 同3(一〇万二九一〇円)

原告の簿外預金(保田隆司名義)から昭和三八年七月二二日引き出された一〇万二九一〇円は、前記(1)で述べた北内正男の借入金八〇〇万円の支払利息等に充てられている。

(3) 同4(二〇〇万円)

原告の簿外預金(保田隆司名義)から昭和三八年七月二二日引き出された二〇〇万円は、前記(1)で述べた北内正男の東京北辰に対する出資金一〇〇〇万円の払込みに充てられている。

(4) 同5(五七万六六六七円)

原告が北内正男から立替金の入金があつたものとして公表帳簿に受け入れた五七万六六六七円は、原告の架空顧客(保田幸司)口座の委託者証拠金から昭和三八年八月二二日払い出された五七万七〇〇〇円(差額三三三円は原告の簿外預金(保田隆司名義)に入金されている。)により充てられている。なお、原告の主張する川棚観光ゴルフ場の会員権の名義は、北内正男である。

(5) 同8(二一万円)

原告の簿外預金(今井静夫名義)から昭和三八年一〇月一一日引き出された二一万円は、北内正男が費消したものである。原告は、北内の欧州視察旅行の日当、諸費用であると主張するが、右欧州旅行について、原告は、その費用として一三四万三三九九円を公表帳簿から支出しているのであるから、原告の事業に関連のある旅行費用であれば、簿外資金から支出する必要はなかつたはずである。

(6) 同13(二五万円)

原告の架空顧客(田公伝兵衛)口座の計算金から昭和三八年一二月二五日払い出された一三八万円のうち二五万円は、北内正男が費消したものである。原告は、会社役員等の旅行費用に支出したもので福利厚生費に該当すると主張する。しかし、原告は、昭和三八年の年末から昭和三九年の年始にかけて役員等の旅行費用に充てるため、昭和三八年一二月二八日に北内正男に五〇万円を仮払金として支出し、右仮払金のうち四五万九五〇〇円を昭和三九年一月九日に重役会議費の名目で会議費及び旅費勘定に振り替え、これを損金に算入して、残額四万〇五〇〇円は現金で同人から返済を受けこれを清算している。ところで、右重役会議名目の旅行の実施の時期と原告主張の役員旅行の実施の時期とは同時期であるところから同一の旅行と認められ、その費用は前述のとおり仮払金として支出された五〇万円のうち四五万九五〇〇円が費消され、残額は清算されているのであるから、簿外資金から更にその費用を支出する必要はなかつたはずである。

(7) 同14(一二一万三三九八円)

架空顧客(深堀三郎)口座から支出された一二一万三三九八円が原告の主張する用途に支出されたと認められるものはなにもなく、北内正男が費消したと認められる。

(8) 同15(一〇九万三〇四〇円)

原告が昭和三八年一二月二七日北内正男から立替金の入金があつたものとして公表帳簿に受け入れた六九万三五四〇円と同人に簿外から支払われた三九万九五〇〇円合計一〇九万三〇四〇円は、原告の簿外預金(井上操名義)から払い出されている。

(9) 同16(一〇〇万円)

原告の架空顧客(勝又実と山下貢)口座から払い出された四八三万六〇〇〇円のうち一〇〇万円は、昭和三八年一二月二七日協和銀行下関支店の北内正男の無記名定期預金となつている。

(10) 同17(一七〇万一〇〇〇円)

原告の簿外預金(井上操名義)から引き出された一七〇万一〇〇〇円は、昭和三八年一二月二七日北内正男に渡されている。原告は、このうち二〇万一〇〇〇円は前記(6)と同様役員旅行費用に支出したと主張するが、それが失当であることはすでに述べたとおりである。

(11) 同20(三五〇万円)

原告の簿外預金(大山茂行名義)から昭和三九年三月二三日引き出された三九〇万円のうち三五〇万円は、北内正男の日産商品の出資金の払込みに充てられている。

(12) 同21(七〇万円)

原告の架空顧客(玉井歯科)口座から昭和三九年三月二六日払い出された一二〇万円のうち七〇万円は、同月二八日北内正男の仮名預金である協和銀行下関支店の山近正夫名義普通預金に入金されている。

(13) 同22(二五〇万円)

原告の簿外預金(高橋宏誌名義)から昭和三九年四月三日引き出された二五〇万円は、前記(11)と同旨である。

(14) 同23(三〇〇万円)

原告の簿外預金(高橋宏誌名義)から引き出された三五〇万円のうち三〇〇万円は、昭和三九年四月一三日北内正男の北辰貿易に対する出資金に充てられている。

(15) 同24ないし28(二八万七〇〇〇円、四四一万三〇〇〇円、五三〇万円、三八〇万円、二〇万円、合計一四〇〇万円)

原告の簿外預金(安川康男名義)から引き出された三六万三〇〇〇円のうちの二八万七〇〇〇円、架空顧客(多田作十郎外四名)口座から払い出された八二一万三〇〇〇円、公表帳簿から出金された五三〇万円、簿外預金(保田秀雄名義)から引き出された二〇万円、合計一四〇〇万円は前記(11)、(13)と同旨である。原告の主張する竹藤敦徳に対する退職金支払いの事実はない。

(二) 仮受金(別表六)について

(1) 原告は、別表六の番号2、5、6、10ないし13、15、17は北内正男からの仮受金ではないと主張するが、被告の調査したところによれば、北内正男の資金から入金される以外にはその資金源泉は見当らないのであるから、同人からの仮受金というべきである。

(2) 別表六の番号9、16、18に関する原告の主張は争う。

(3) 原告は、別表六には掲記されていない仮受金として、昭和三九年六月二七日山本勝也から原告の株式を買い取るため二五〇万円を北内から仮受けたと主張するが、右二五〇万円は、原告の架空顧客口座及び簿外預金から出金されており、北内からの仮受金ではない。

(三) 利息の計算方法についての被告の反論は、前記一3で述べたとおりである。

7 貸倒損の否認額(第五の三7)

原告は、河村との間に委託取引上の紛議が発生したため同人に対する委託者未収金を請求しないことにしたと主張するが、仮にそうであつたとしても、河村に対する債権金額は多額であり、また、個人資産も相当あるのであるから、かかる場合は、委託者紛議として公の機関によつて解決を図ることとし、その解決が得られるまでは債権として残すべきであり、本件貸倒れ計上は時期尚早であつたといわなければならない。

また、仮に原告が河村に対し債権放棄をしていたとしても、貸倒れとして損金処理ができるのは、真実債権の回収ができないときに限られるのであつて、本件のように債務者が資産家である場合には、債権放棄が回収不能によるものとみることはできないから、右債権放棄は原告の河村沢治への寄付金と解すべきである。そこで、右寄付金四五七万五五〇〇円について、旧法人税法九条三項、旧法人税法施行規則七条一項の規定により寄付金の損金算入限度額を計算すると九八万〇五六四円のみが損金となるにすぎず、これを差し引いた三五九万四九三六円は所得の計算上損金に算入されないこととなる。

なお、右寄付金四五七万五五〇〇円に前記5における予備的主張の大上司に対する寄付金七〇〇万円を加えたところで同規則七条一項の規定により右寄付金合計額一一五七万五五〇〇円の損金算入限度額を計算すると、九八万〇五六四円のみが損金となる。したがつて、大上司に支出した金額七〇〇万円と河村沢治に対して債権放棄した金額四五七万五五〇〇円の双方が税法上寄付金とされるべきものであるとすれば、右河村沢治に対する貸倒損計上額四五七万五五〇〇円はその全額が損金に算入されないこととなる。なんとなれば、寄付金の損金算入限度額は、寄付金支出額の多寡とは無関係に計算される(旧法人税法施行規則七条七項(昭和三七年政令九五号による改正後のもの)参照)からであり、右損金算入限度額は大上司に対する寄付金の予備的主張においてすでに控除されているからである。

8 雑損失の否認(第五の三8)

矢野に対する三八九万四七〇〇円が貸付金でないとの主張は争う。

原告は、予備的に、矢野に対する退職金と精算したと主張するが、当期末において矢野は原告に勤務していたのであつて、同人に退職金を支給するいわれはないのみならず、当時原告には退職金支給規定はなく、また、退職した従業員に退職金を支給した例はなかつたのであるから、原告のこの点に関する主張は失当である。

9 差金勘定認容額の否認額(第五の三9)

(一) 原告は、立替金等を差金勘定によつて安易に調整していたと主張するが、仮にそうであつたとしても、原告は、当期末だけでなく昭和三八年六月期においても修正決算に際し各勘定科目の見直しを行い、そうした誤つた仕訳を訂正しているのであるから、値洗差金と帳簿差金との食い違いの原因が、右の誤つた仕訳に基づくものということはできない。

(二) 原告は、総勘定元帳の差金勘定に一六〇三万二二七九円の記載のないことをもつて、過年度操作差金を取り崩したことはないと主張するが、原告の総勘定元帳は、単にその日の合計額が記載されているにすぎず、しかも、振替伝票の起票日どおりには必ずしも記載されていないところから、総勘定元帳のみでは振替伝票の元帳転記を論ずことはできない。

過年度操作差金のうち一六〇三万二二七九円が昭和三八年六月期において取り崩されたことは、次の事実からも裏付けられる。

(1) 昭和三七年九月二九日付会計伝票(借方・差金勘定一六〇三万二二七九円、委託者未収金一六二万四八〇〇円、貸方・委託者証拠金一五四四万三八四九円、委託者未払金二二一万三二三〇円)の仕訳は、原告が河村正美外一〇口の架空口座を利用して得た商品売買益等の内訳を明らかにした際引用した別表一〇の※印が付された金額(昭和三七年上半期のもの)と一致すること

(2) 昭和三八年六月期において、河村正美外一〇口座に係る架空の委託者証拠金のうち五九六万三九三六円及び架空の委託者未払金三万六〇六四円合計六〇〇万円が払い出され、原告の自社株式の簿外での取得に使用されていること

(3) 河村正美外一〇口座の架空の委託者証拠金のうち四六五万七七四九円は、昭和三八年六月期の修正決算の際に架空の預り金勘定に振り替えられたと認められること

(4) 河村正美外一〇口座の架空委託者証拠金の残額四八二万二一六四円及び別表一〇から算出される架空委託者未払金の払出額二一五万四六三〇円の合計六九七万六七九四円は仮払金等その他の簿外資産五三七万四五三〇円に充てられたと認められること

(5) 更に、右六九七万六七九四円と五三七万四五三〇円との差額一六〇万二二六四円は、別表一〇から算出される架空委託者未収金の減少額一五九万六八〇〇円に充当されたと認められること

なお、原告は、簿外差金を他の資産に振り替えたとしても、すでに課税済の過年度操作差金五六六三万一九二〇円を雑益として公表帳簿に受け入れた以上、右差金全額につき減額すべきであると主張するが、原告の受入経理は差金のみを雑益の相手科目としており、取崩しに変容した差金、すなわち有価証券等の簿外資産は未だ公表帳簿に受け入れられていないのであるから、原告が二重課税を回避するため行つた申告減算は右簿外資産に見合う一六〇三万二二七九円の過大減算となり、被告が差金勘定の認容額を否認したことによつて雑益勘定に過大に計上されたこととなる一六〇三万二二七九円は、右過大減算によつて差引き零となり、改めて減算する必要はない。

(三) 原告は、被告が否認した一六〇三万二二七九円が当期の利益ではないかの如く主張するが、原告の経理自体が値洗いによつて発覚した簿外差金から過年度操作差金と帳簿差金を控除したもの(原告の申告では三五一万八九〇〇円)を当期の商品売買益として申告しているのであるから、同じ手法によつて得られた商品売買益一六〇三万二二七九円も右三五一万八九〇〇円と同様当期の利益とみるべきである。

(四) 原告は、昭和三九年六月二七日に行つた値洗いは正確でなく、後日検討したところ、三五九万一〇〇〇円過大であつたと主張するが、当時値洗いについて十分な検討をしたであろうことは、値洗いによつて明らかとなつた簿外差金と帳簿残高を調整するためにわざわざ三五一万八九〇〇円を自己加算して所得金額を増加させていることからも明らかであるし、課税調査の段階で値洗いの実施責任者江角高明業務部長とそれを取りまとめた責任者田村健二経理部長は、調査担当者に対し値洗いは正確であつたと供述している。

なお、本件において原告から証拠として提出された値洗表(甲第一四号証)は、当初作成されたものとは別のものと思われる。

(五) 原告が当期の商品売買益として申告した三五一万八九〇〇円が過大であつたとの主張は争う。

(六) 原告は、帳簿上の差金勘定残高は四二一万三二八九円ではなかつたと主張するが、原告が受入経理に際して六〇一五万〇八二〇円を差金勘定の借方に計上した結果、差金勘定の残高が値洗額六四三六万四一〇九円と一致したのであるから、右受入経理直前の差金勘定残高が四二一万三二八九円であつたことは算術上自明の理である。総勘定元帳に四二一万三二八九円の記載が見当らないのは、前記(二)で述べたとおり原告の総勘定元帳の記帳の特殊性によるものである。

四  原告の主張する「昭和三九年六月期における簿外経費」について

この点に関する原告の主張は、次のとおり失当である。

1 北辰貿易設立費用(第五の四1)

原告が北辰貿易の設立費用として五〇万円を支出したことは争う。

仮に、原告が右設立費用を支出したとしても、原告と北辰貿易とは法人格を異にするから、別法人の設立費用を原告の経費とするいわれはない。もつとも、原告が発起人であれば、設立費用の負担を正当化する余地もあるが、原告は北辰貿易の発起人ともなつていないので、いずれにしても設立費用を原告の経費とすることはできない。

2 リクリエーシヨン費(第五の四2)

昭和三八年一〇月一一日原告の簿外預金(石川和枝名義)から引き出された三万八〇〇〇円については、被告は、第三の二(二三)において右預金から同日引き出された二三万円(別表九参照)全額を福利厚生費として原告の経費に認めているので、右三万八〇〇〇円も当然これに含まれており、原告の主張は失当である。

3 借入利息等(第五の四3)

昭和三八年七月二二日協和銀行下関支店から八〇〇万円を借り受けたのは、原告ではなく北内正男であるから、右借入金の利息等を原告の経費とするいわれはない(前記三6(一)(1)、(2)参照)。

4 欧州旅行費(第五の四4)

前記三6(一)(5)で述べたとおり、原告が北内正男の欧州旅行費と主張する二一万円は、同人に対する仮払金であり、原告の経費ではない。

仮に、右二一万円が原告の経費として支出されたとしても、右金額が原告の事業に関連のある海外旅行の費用として実際に支出されたものとの証拠がないので、右金額は、法人税法上使途不明等の交際費等に準じて取り扱われることとなるが、使途不明の交際費が所得金額の計算上損金に算入されないことは、すでに前記二2で述べたとおりである。

5 役員旅行及び会議費(第五の四5)

原告が役員旅行及び会議として主張する四五万一〇〇〇円のうち、二五万円は前記三6(一)(6)において、また残り二〇万一〇〇〇円は同(10)において述べたとおり、いずれも北内正男に対する仮払金であつて、原告の経費ではない。

6 オーストラリア旅行費(第五の四6)

原告が大山茂行のオーストラリア旅行費として四〇万円を支出したことは争う。

7 送金料(第五の四7)

原告が第一銀行に送金料六〇〇円を支払つたことは争う。同銀行は、原告が送金する場合は無料扱いとしていた。

8 東京北辰設立費用(第五の四8)

原告が主張する二八五万八〇四〇円のうち一七六五万五〇〇〇円が東京北辰の設立費用として支出されたものであることは認める。しかし、原告は、東京北辰とは法人格を異にし、しかも、発起人ではないのであるから、東京北辰の設立費用を原告の経費とするいわれはない。

残り一〇九万三〇四〇円は、前記三6(一)(8)のとおり北内正男に対する仮払金である。仮に、右一〇九万三〇四〇円が東京北辰の設立費用として支出されたものであつたとしても、これが原告の経費とならないことは、右一七六万五〇〇〇円と同様である。

9 役員賞与(第五の四9)

原告がその主張のような役員報酬及び使用人賞与を支払つたことは争う。北内正男に支払つた二五〇万円は、前記三6(一)(9)、(10)の合計二七〇万一〇〇〇円の一部であり、同人に対する仮払金である。

仮に、原告が主張するように北内正男外四名に五二八万円が支給されていたとしても、それは、法人税法上損金とは認められない。けだし、北内正男、竹藤敦徳、大山茂行はいずれも原告の役員であるところ、同人らに対して支給された四七六万円は一度に支給されており、前記二1で述べた理由により役員賞与に該当するので、損金とすることはできない。また、木塚昭義、高橋宏誌は使用人兼務役員であるが、同人らに対する賞与は、別途利益から簿外で支給されているから、同じく前記二1で述べた理由により損金とは認められない。

10 歩合的交際費(第五の四10)

原告が歩合的交際費を支出したことは争うが、仮に、その主張のような歩合的交際費を支出していたとしても、前記二2で述べた理由により原告の経費とすることはできない。

11 給料(第五の四11)

原告が竹藤敦徳に昭和三九年三月分の給与を支給したことは争う。竹藤は、原告も認めるとおり昭和三九年二月末日をもつて原告を退社しており、退職後に給与を支給するいわれはない。

12 退職金(第五の四12)

原告が竹藤敦徳に退職金を支払つたことは争う。原告の主張する五〇〇万円は、前記三6(一)(11)、(13)、(15)と関連し、北内正男に対する仮払金である。

仮に、原告が竹藤に退職金五〇〇万円を支給していたとしても、法人が退職した役員に対して支給した退職給与金が損金に算入されるためには、法人が当該退職給与金を損金として経理することが必要である(旧法人税法施行規則一〇条の四、「国税庁長官通達昭和三四年直法一―一五〇」の「四八」参照)。ところで、原告が専務取締役であつた竹藤に支給したとする退職給与金は簿外から支給されているのであるから、このような行為は、いわゆる隠れた利益処分として法人税法上利益処分に該当するのである。したがつて、仮に、竹藤に対し五〇〇万円の退職金が支給されていたとしても、損金経理がされていないので、原告の経費とすることはできない。

(証拠関係)<省略>

理由

第一請求原因一、二の事実は当事者間に争いがない。

第二昭和三八年六月期

一  本件更正処分(一)の各更正項目の適否

本件更正処分(一)の更正項目のうち表(三)区分欄IIの4ないし7及びIIIの11ないし13をそれぞれ原告の修正申告所得金額に加算、減算すべきことは、当事者間に争いがないので、その余の更正項目について順次検討する。

1  減価償却費の償却超過額八五万九八二五円(表(三)II1)

(一) 原告が損金に計上していた別表一掲記の店舗改造費八〇万九〇六六円、絵画及び額縁の取得代金七万円が、いずれも資本的支出に該当すること、そして絵画及び額縁の取得代金の当期における減価償却超過額が六万六三九五円であることは、当事者間に争いがない。

(二) 被告は、店舗改造費については大蔵省令38別表一により耐用年数を三〇年としているが、原告は、改造を加えた店舗が他人から賃借したものであることを理由に被告の適用した耐用年数を争つているところ、右店舗が他からの賃借に係るものであることを被告は明らかに争わないので、これを自白したものとみなすほかはない。

右のような賃借店舗に要した改造費の減価償却については、当該店舗自体の耐用年数(大蔵省令38別表一により三〇年とされている。)のほか、賃借期間、改造部分の用途、使用材質等を勘案して、その耐用年数を合理的に算定すべきであるが、建物に改造を加えた場合には、特段の具体的立証のない限り改造部分は建物と同程度の耐久力を有するものと推定されるのであり、また、本件賃貸借が更新されないものであつたと認めるべき証拠はなく、しかも、成立に争いのない乙第三四号証及び証人遠藤登芽夫(第一、二回)の証言によれば、本件課税処分に先立つ原告の法人税法違反嫌疑事件の調査の際、調査担当者が本件各係争事業年度における原告の資本的支出(本件店舗改造費も含む。)に関する明細書を原告の当時の財務課長田村健二に示して内容を検討させたところ、同人は本件の店舗改造費について耐用年数が三〇年であることを異議なく認容していたことが認められる。そして、本件全証拠によつても、前記推定を覆すに足りる事実はなんらこれを認めることはできない。

してみれば、被告が本件店舗改造費について、耐用年数を三〇年としたことは不合理ではないといわなければならず、そうであるとすれば、別表一のとおりに算出される減価償却費の償却超過額七九万三四三〇円は当期の損金から除外されるべきである。

(三) 結局、右(二)の七九万三四三〇円と前記(一)の絵画及び額縁の減価償却超過額を合算した八五万九八二五円は損金とすることができないものである。

2  商品売買益計上もれ一四九九万一二五〇円(表(三)II2)

(一) 河村正美外二〇口の架空顧客口座による商品売買益

(1) 原告が当期において河村正美外二〇口の架空顧客口座(別表二の1ないし21)を用いて商品売買益を得たこと、このうち河村正美外一〇口の架空顧客口座(別表二の1ないし11)に係る商品売買益を修正申告(申告金額を除く。)したこと及び当期における河村正美外一〇口による商品売買益が六〇〇万一六〇〇円であることは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第三六、第三七号証、原本の存在と成立に争いのない乙第四五号証の一ないし一〇、証人田中悟の証言により真正に成立したと認められる乙第一号証の一ないし一一、証人元岡正嘉の証言により真正に成立したと認められる乙第二四、第二五号証並びに証人元岡正嘉、同田中悟及び同遠藤登芽夫(第二回)の各証言によれば、原告が当期において河村正美外二〇口の架空顧客口座を利用して得た商品売買益は、架空の委託者手数料を含めると、別表二に記載されているとおり一〇八三万五六〇〇円であつたことが認められる。

(2) ところで、被告は、原告が当期に修正申告した河村正美外一〇口に係る商品売買益は六〇〇万一六〇〇円であると主張するのに対し、原告は、右修正申告額は昭和三七年上半期分の利益をも含めて合計六三五万九七〇〇円であり、かつ、それは架空の委託者手数料を控除した純利益であると主張し、成立に争いのない甲第二三号証(田村健二の証言部分)並びに証人田村健二(第一、二回)及び同久富寿一の各証言は、これに符合するものである。しかしながら、原告が当期において公表帳簿に受け入れて修正申告したと主張する昭和三七年上半期の河村正美等の架空名義を使用して得た商品売買益が過去三事業年度における課税済の過年度操作差金五六六三万一九二〇円の一部としてすでに課税済であることは後記のとおり当事者間に争いがないところ、原告の主張するところによれば、右過年度操作差金五六六三万一九二〇円は昭和三九年六月期末に公表帳簿に受け入れたというのであり、また、後記のとおり現実にそうした経理がなされているのであるから、原告が当期において昭和三七年上半期の右商品売買益をも修正申告したとの主張並びにこれにそう前記各証拠は、採用することができないというべきである。

なお、証人田村健二(第二回)は、甲第三三号証、第三八号証の一ないし三からしても、原告が昭和三七年上半期の商品売買益を修正申告したことは明らかであると証言するが、甲第三八号証の一ないし三をみても、はたして右商品売買益が修正申告されたものであるかどうかは判断できないし、甲第三三号証も修正申告の際における決算の商品売買益が当初決算のそれと比較して五八二万三二二六円増加しているにすぎず、右金額は、当事者のいずれの主張金額とも異なるのであつて、右各書証によつても、前記原告の主張を認めることはできない。

そうすると、原告のした修正申告額は、当期における河村正美外一〇口に係る商品売買益が六〇〇万一六〇〇円であることからして、同額の六〇〇万一六〇〇円であつたと認めるのが相当である。

(3) 以上の事実によれば、当期における河村正美外二〇口の架空顧客口座による商品売買益は一〇八三万五六〇〇円であるので、これより原告が修正申告をした六〇〇万一六〇〇円を控除すると、四八三万四〇〇〇円が申告もれとなる。

なお、右金額は架空の委託者手数料を含むものであるが、これについては、後記6で減算しているので、ここでは減算しない。

(二) 森義和外四口座の委託者未払金

(1) 原告が森義和外四名の架空名義を用いて同人らがあたかも委託取引をしたかのように見せかけて、別表三記載の架空の委託者未払金一〇一五万七二五〇円を計上していたことは、当事者間に争いがない。

(2) ところで、原告は、森義和外四口の架空顧客口座に委託者未払金を計上したのは利益を除外するためではなく、滞納税による差押えを免れるため資金を架空の負債に振り替えて疎開させたにすぎないのであつて、架空の委託者未払金を計上しても、それと同時にそれに見合う架空の資産(差金勘定)を計上しているので、損金に関係ないと主張する。

しかし、前掲甲第二三号証(江角高明の証言部分)、成立に争いのない乙第二号証の一ないし五、第二七号証の一、二(書入れ部分を除く。)、第四〇号証、証人元岡正嘉の証言により真正に成立したと認められる乙第二六号証並びに証人元岡正嘉、同遠藤登芽夫(第二、三回)及び同江角高明(第一回の一部)の各証言によれば、当時、原告の業務部長であつた江角高明は、当期終了後である昭和三八年七月ころ、原告が実際に取引所を通して行つた自己先物取引を記録してある勘定元帳から利益の出ている取引を抽出するとともに、右抽出した自己取引に係る利益を森義和外四名の架空の委託者未払金に振り替えたことが認められる一方、原告の主張する架空の資産(差金勘定)の計上については、前掲第二三号証(田村健二の証言部分)、証人田村健二(第一、二回)、同江角高明(第一回)の各証言以外にはこれを認めるに足りる証拠はなく、右各証言も帳簿その他の客観的裏付けがあるわけではないことから、たやすく措信しがたい。むしろ、前記認定に供した各証拠によると、架空の差金勘定は計上されていなかつたことが窺われるのであり、原告の主張は、失当である。

(3) そうすると、森義和外四口の架空顧客口座の委託者未払金一〇一五万七二五〇円は益金に加算すべきである。

(三) 以上によれば、(一)の四八三万四〇〇〇円と(二)の一〇一五万七二五〇円との合計額一四九九万一二五〇円が益金計上もれとなる。

3  受取利息計上もれ三万一八二五円(表(三)II3)

(一) 原告の架空顧客口座と簿外仮名預金に表(四)、(五)のとおりの入出金のあることは、当事者間に争いがない。原告は、右入出金が北内正男に対する仮払金、仮受金であることを争うが、証人田村健二(第一回)の証言により真正に成立したと認められる甲第一五号証の一、二及び右証言によれば、表(四)の出金は北内に対する仮払金、表(五)の入金は同人からの仮受金であることが認められる。

そうであるとすれば、特段の事情のない限り、右仮払金と仮受金との差額については、これに対する通常の貸付利息に相当する額の利益(いわゆる「認定利息」)が原告の益金を構成するものというべきである。

(二) ところで、被告は、右認定利息額を算出するについて月末平均残高法を採用しているが、この方法は、貸付け及び回収が頻繁であるため貸付残高が常時変動し、しかも、その貸付期間が相当長期にわたるような場合においては、各月末における貸付金額の増と減とは相互に打ち消しあつて自ずと平均化されるのが通常であることから、そうした場合の概算的な利息の計算方法として一応の合理性が認められているものであり、一般的には積数計算法によるのが正確であることはいうまでもない。

ところで、本件について見ると、表(六)によつて明らかなとおり、貸付残高は、昭和三七年七月から昭和三八年三月までは八万円と一定しているが、同年四月、五月は一挙に一一三万三〇〇〇円と一四倍になり、同年六月は八三万三〇〇〇円と若干減少している。してみると、本件は、貸付残高変動の回数が少ないにもかかわらず、貸付残高変動額は極めて大きく、しかも、貸付残高の低い期間が一事業年度の大半を占めているのであつて、かかる条件下においては、月末平均残高法を採用するのは相当ではなく、積数計算法を採用すべきである。

そこで、北内正男に対する仮払金、仮受金の差額につき、積数計算法に基づき原告が争わない年一割(日歩二銭七厘四毛)の利率で認定利息を計算すると、次のとおりである。

<ア> 自昭和三七年七月一七日至昭和三八年四月二五日(二八三日)

八〇、〇〇〇円×〇・〇〇〇二七四×二八三日=六、二〇三円

<イ> 自昭和三八年四月二六日至同年六月二五日(六一日)

一、一三三、〇〇〇円×〇・〇〇〇二七四×六一日=一八、九三六円

<ウ> 自昭和三八年六月二六日至同月二九日(四日)

九八三、〇〇〇円×〇・〇〇〇二七四×四日=一、〇七七円

<エ> 昭和三八年六月三〇日(一日)

八三三、〇〇〇円×〇・〇〇〇二七四=二二八円

以上合計(<ア>+<イ>+<ウ>+<エ>) 二万六四四四円

よつて、二万六四四四円は、原告の修正申告所得金額に加算すべきである。

4 商品売買益当期認容額の否認一二一万三八三〇円(表(三)II8)

原告が、修正申告をした前記2(一)の河村正美外一〇名の架空名義による商品売買益の中にはすでに更正処分を受けた昭和三七年上半期の利益が含まれているとして、一二一万三八三〇円を益金から減算していることは、当事者間に争いがないところ、前記2(一)で述べたとおり昭和三七年上半期の利益は修正申告されていないのであるから、右一二一万三八三〇円を減算すべき理由はなく、同金額は益金に加算されるべきである。

5 営業権の減価償却超過額の当期認容額二八三万五〇〇〇円(表(三)III9)

(一)  原告が、昭和三五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、広島営業所及び大島営業所を開設するにあたり大一物産から営業権を取得しその債権債務を肩代わりしたこと、下関税務署長は、右事業年度の法人税の更正処分において、右肩代わりに伴つて生じた債務超過額五四〇万円(広島営業所分二一六万円、大島営業所分三二四万円)は営業権取得の対価と認め、右金額から右事業年度の減価償却費として損金に算入すべき金額を控除した金額(大蔵省令38別表九に定めるところにより耐用年数を一〇年とし、旧法人税法施行規則二一条の三の規定により定額法で残存価額零として算出した金額)を益金に加算したこと、右処分は原告の不服申立てなく確定し、下関税務署長は、以後の各事業年度において、右営業権につき損金に算入すべき減価償却費相当額を原告の益金から減算してきたこと、当期において、大島営業所に関する営業権の未償却残高二六一万九〇〇〇円全額を損金に認容すべきことは、当事者間に争いがない。

(二)  ところで、被告は、広島営業所の営業権について従来どおり未償却残高のうち二一万六〇〇〇円(取得価額二一六万円の一〇分の一)を当期分の減価償却費として損金に認容しているところ、原告は右減価償却費の金額を争い、証人田村健二(第一回)は、大一物産から取得した営業権は繰延資産として償却期間を五年にすべきであると証言する。しかし、旧法人税法施行規則二一条によれば、通常の営業権は無形固定資産として減価償却の対象となるものであり、広島営業所に関する営業権が右通常の営業権と異なるものであつたとの証拠はないので、これを繰延資産と認める余地はない。そうであるならば、減価償却資産たる営業権の耐用年数は、大蔵省令38別表九により一〇年と定められており、本件全証拠によるも、これと異なる耐用年数を適用すべき事実はこれを認めることができないのであるから、広島営業所の営業権について当期分の減価償却費として損金に算入すべき金額は、二一万六〇〇〇円とすべきである。

(三)  そうすると、営業権の減価償却超過額の当期認容額の合計は二八三万五〇〇〇円となる。

6 委託手数料の認容額一八一万一八〇〇円(表(三)III10)

前記2(一)で述べたとおり、河村正美外二〇口の架空口座による商品売買益一〇八三万五六〇〇円の中には委託手数料一八一万一八〇〇円が含まれているので、右金額を損金に認容すべきである。

原告は、修正申告をした河村正美外一〇口座に係る売買益は委託手数料五一万三八〇〇円を控除した純利益であるから、一八一万一八〇〇円のうち五一万三八〇〇円は損金として認める必要がないと主張するが、前記2(一)で認定したとおり、原告が修正申告をした商品売買益の中には委託手数料が含まれていたのであり、一八一万一八〇〇円全額を損金として修正申告所得金額から減算すべきである。

二  昭和三八年六月期における簿外経費

原告は、当期において簿外資金から二二七万八五三二円を営業経費として支出したと主張するので、判断する。

1  役員賞与等一五〇万円(事実欄第五の二1)

(一) 原告は、昭和三七年一二月七日役員報酬として、北内正男(代表取締役)に六〇万円、竹藤敦徳(専務取締役)に三五万円、大山茂行(常務取締役)に二〇万円、使用人賞与として、具塚谷恒良(部長)に一八万円、江角高明(部長)に一七万円、合計一五〇万円を支給したと主張する。

しかしながら、成立に争いのない甲第二六号証、証人田村健二(第一回)、同江角高明(第一回)の各証言によれば、原告が右北内らに支給したという金員は、報酬ではなく、臨時的に支給された給与すなわち賞与であること、当時、北内は代表取締役、竹藤は専務取締役、大山は常務取締役、具塚谷は部長兼務の取締役、江角は営業部長の地位にあつたことが認められる。

そうすると、北内、竹藤、大山に支給された分は、役員賞与として、旧法人税法施行規則一〇条の四の規定によりこれを損金とすることのできないものである。また、具塚谷に対する支給分については、同人が使用人兼務役員であつて、当該支給分が簿外資金から支出され損金経理がされていない以上、同規則一〇条の四の規定により損金に算入することのできないものである。更に、江角高明に対する使用人賞与としての支給分についても、証人江角高明(第一回)の証言によれば、同人は公表帳簿から支給された一三万円のほかに簿外から前記一七万円を賞与として受領したというのであるから、右一七万円の賞与はいわゆる隠れた利益処分としての性格を有するものとみるのが相当であり、損金として認めることのできないものである。

(二) そうすると、原告が簿外資金から支出したと主張する一五〇万円は、仮にその主張のとおりの支給の事実があつたとしても、損金として認めることはできないといわなければならない。

2  歩合的交際費三九万二〇三二円(同2)

(一) 原告は、当期において、各営業所長に対し顧客及び外務員等に対する交際費として三九万二〇三二円を支出したと主張するが、原告側で簿外経費の内訳を一覧表にしたもので証人田村健二(第一回)の証言により真正に成立したと認められる甲第二二号証によれば、右歩合的交際費三九万二〇三二円は、被告が使途不明金一六五万二八二八円を営業費と認めている(表(三)III12)ので撤回するとされており、証人田村健二(第一回)も右歩合的交際費は撤回すると証言しているところからすれば、右歩合的交際費は、仮に原告主張のとおり支出されたものであつたとしても、それは、被告がすでに経費として認容した営業費と重複するものと推認され、右推認を覆すに足る証拠もないのであるから、右歩合的交際費は損金として認めるに由なきものである。

(二) また、仮に原告の主張する歩合的交際費が右営業費と重複しないものであつたとしても、右歩合的交際費なるものは、原告の主張するところによれば、営業所長に手渡され、それが個人で費消されるか、あるいは営業社員又は顧客の接待に費消されるかは原告の関知するところではないというのであり、また、本件全証拠によつても、その使途は明らかでなく事業と直接関連ある交際、接待等の用に現実に使用されたことを確認しがたいのであるから、原告の主張する歩合的交際費を損金として認めることはできないといわなければならない。

3  委託取引における委託手数料戻し三八万六五〇〇円(同3)

原告は、仲買人大津屋より先物商品委託取引の注文を受け委託手数料を収受したが、大津屋が同業者であつたことから、昭和三八年六月七日右手数料の半額三八万六五〇〇円を大津屋に返還したと主張し、前掲甲第二三号証(江角高明、弘中温子及び田村健二の証言部分)、証人江角高明(第一回)及び同田村健二(第一回)の各証言はこれに符合するものである。しかし、成立に争いのない乙第四八ないし第五一号証、第五二号証の一ないし五、乙第五三号証の一ないし三によると、大津屋の帳簿には昭和三八年六月七日及びその前後ころに原告から三八万六五〇〇円が入金されたとの記帳はされていないことが認められるのであり、右事実に照らすと、原告の主張にそう前記各証拠はにわかに措信しがたいといわなければならない。もつとも、原告の主張によれば、原告の右返還についての経理上の処理は、昭和三八年六月七日公表帳簿より江角高明に対する仮払金名目で大津屋に支払い、これを同月二九日原告の簿外仮名預金(保田隆司名義)からの出金によつて充当したというものであり、成立に争いのない乙第四二ないし第四四号証の各一、二によれば、昭和三八年六月七日に額面三〇万九五〇〇円と一〇万円の小切手二通を原告が振り出し、これを原告の従業員が現金化していること、また、成立に争いのない甲第二号証の一、二によれば、原告の簿外仮名預金(保田隆司名義)から同月二九日三八万六五〇〇円が出金されていることがそれぞれ認められるが、右事実のみをもつて直ちに原告が大津屋に三八万六五〇〇円を支払つたと推認することは相当でないといわなければならない。

よつて、原告が大津屋に手数料の半額を返還したとの主張は、結局理由がない。

三  本件更正処分(一)の適否

以上認定したところに従つて原告の昭和三八年六月期の所得金額を計算すると、原告の修正申告額二一九万一二五七円に加算すべきものは表(三)IIの1、2、4ないし8掲記の金額と3のうち二万六四四四円であり、減算すべきものは同表IIIの9ないし13掲記の金額であつて、原告の主張する簿外経費はいずれも損金とは認められないので、右によつて得られる所得金額は一一五九万六四八七円となるところ、本件更正処分(一)の認定した額はその範囲内である一一四二万一七八二円であるから、本件更正処分(一)は適法である。

第三昭和三九年六月期

一  本件更正処分(二)の各更正項目の適否

本件更正処分(二)の更正項目のうち表(七)区分欄IIの3ないし5、7、15、16及びIIIの20、21、23、24をそれぞれ原告の申告所得金額に加算、減算すべきことは、当事者間に争いがないので、その余の更正項目について順次検討する。

1  減価償却費の償却超過額七九万八七一三円(表(七)II1)

(一) 原告が損金に計上していた別表四掲記の店舗改造費五七万九三三〇円、冷房設備費二六万二六〇〇円がいずれも資本的支出に該当することは、当事者間に争いがない。

(二) 原告は、被告が右各支出につき適用した耐用年数(店舗改造費三〇年、冷房設備費一三年)を争うが、店舗改造費について耐用年数を三〇年としたことが不合理といえないことは前記第二の一1(二)において判示したとおりである。また、冷房設備費についても、証人田村健二(第一回)の証言によれば、右設備費は原告の所有する本店店舗のクーラーの設置換えの費用であることが認められ、右クーラー(冷房設備)の出力が二二キロワツト以下であることを原告は明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。そうすると、大蔵省令39別表一により右冷房設備費の耐用年数は一三年となる。

以上によれば、店舗改造費の耐用年数を三〇年、冷房設備費のそれを一三年として別表四のとおり算出される当期分の減価償却費四万三二七九円を超過する七九万八七一三円は、損金とすることのできないものである。

2  営業権の減価償却超過額五九〇万円(表(七)II2)

(一) 原告が、仲買人協会に昭和三九年五月三〇日臨時特別会費六〇〇万円を納付し、これを当期の損金に計上したこと、取引所の商品仲買人の定数が三名増員され、これを契機に原告が取引所の商品仲買人となつたこと、原告が商品仲買人になるについて仲買人協会の推せんを得たこと及び商品仲買人となるための手続が被告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

(二) 成立に争いのない甲第三、第四一号証の各一、二、乙第三一号証(甲第四号証は同一のもの)、第六〇号証の一、証人田村健二(第二回)の証言により真正に成立したと認められる甲第四二号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第八号証の一、二、第九ないし第一二号証、第六〇号証の二、第六一号証並びに証人元岡正嘉、同遠藤登芽夫(第一回)、同江角高明(第一回)、同田村健二(第一、二回)及び同久富寿一の各証言によると、次の事実が認められる。すなわち、

昭和三九年当時、商品市場において商品の売買取引をする商品仲買人は、商品取引所ごとにその定数が設けられ、主務省に備える商品仲買人登録簿に登録を受けたものに限られており、誰もが自由に商品の売買取引をすることができるわけではないところから、商品仲買人たる地位は売買の対象となり、その社会ではかかる売買をシート売買、また、その対価をシート料と呼んでいること、シート売買は、通常は営業体を含めての譲渡(いわゆる営業譲渡)の形式をとることが多いが、商品仲買人の地位のみを譲渡することもあること、ところで、神戸穀物商品取引所においては、昭和三九年において、商品仲買人の定数がそれまでの二五人から二八人に増員され、これを契機に原告も、右取引所の商品仲買人をもつて組織される仲買人協会の推せんを得て、同年五月二九日同取引所の商品仲買人となつたこと、仲買人協会は、会員である商品仲買人相互の親睦を図り、仲買人として共通の利益を増進し、かつ取引所の推進力となり、これが繁盛を図ることを目的とする団体であり、法律上はなんらの権限も有するものではないけれども、新たに商品仲買人となるためには事実上仲買人協会の推せんを受けることが必要であり、その推せんがない限り商品仲買人としての主務省の登録を受けることも期待できない実情であつたこと、本件においても、原告は、仲買人協会の定めた臨時特別会費六〇〇万円を同協会に納めることにより同協会の推せんを得たものであるが、それは、原告が取引所の定数増員を機会に他の商品仲買人の地位を譲り受けることなく新たに商品仲買人となろうとしたためであつて、もし、原告が他の商品仲買人からその地位を譲り受けていたならば、譲渡人に対してシート料を支払わなければならない代わりに右臨時特別会費の納付を求められることはなかつたこと、右臨時特別会費六〇〇万円は、原告が仲買人協会を脱退しても返還されることはないが、原告は、その商品仲買人たる地位を有償で他に譲渡しうること

以上の事実が認められ、右認定に反する証人江角高明(第一回)、同田村健二(第一、二回)及び同久富寿一の各証言は措信することができない。

右認定の事実によれば、原告が仲買人協会に納付した六〇〇万円は、実質的にはシート料若しくはそれに準ずるものということができ、右六〇〇万円と原告が取得した商品仲買人の地位とは実質的に対価関係に立つものと認めるべきである。

(三) ところで、商品仲買人は、前記のとおり商品市場において商品売買取引をなしうるものであつて、商品仲買人でなければかかる取引をすることはできず、そうしたことからその地位自体も独立に売買の対象となる財産的価値を有しているものとして取り扱われているのであるから、商品仲買人たる地位は、商品売買取引業なる一種の独占的な営業によつて収益をあげることを可能ならしめる独立の資格ないし力として、旧法人税法施行規則二一条にいう営業権に含まれるものと評価すべきである。

原告は、これに対し、営業権とは他の企業を上回る企業収益力すなわち企業の超過収益力と理解すべきであり、営業を伴わない商品仲買人の地位そのものは、これと異なると主張する。確かに、形式的には原告主張のとおりであるが、商品仲買人たる地位が前記のとおり定数制の採用によりその者に独占的収益をもたらす力のある独立の資産として評価され取引されている実態にかんがみれば、その地位ないし資格は実質的には通常の企業において超過収益をもたらす営業権と異なるところはないというべきである。

(四) 以上のとおり、原告が仲買人協会に納付した臨時特別会費六〇〇万円は営業権取得の対価と認められる(したがつて、原告のいう繰延費用としての開発費に当たらないことは明らかである。)ところ、大蔵省令39別表九は営業権の耐用年数を一〇年と定めており、これによつて当期分の減価償却費を計算すると一〇万円となるので、残額五九〇万円は減価償却超過額として損金から除外されるべきである。

3  雑収入計上もれ三八万七六五六円(表(七)II6)

(一) 被告が主張する雑収入計上もれ(事実欄第三の二2(六)(1)ないし(3))のうち昭和三八年一〇月二二日原告の簿外仮名預金に入金された一万六二四八円(同(2))及び証券会社から支払われたリベート三一万九五六五円(同(3))合計三三万五八一三円を当期の益金に加算すべきことは、当事者間に争いがない。

(二) 同(1)のうち末藤博一名義普通預金から払い出された五万一八四三円が昭和三八年一二月二五日原告の簿外仮名預金である石川和枝名義普通預金に入金されていることは、当事者間に争いがないところ、原告は、右五万一八四三円は原告の従業員が親睦を図ることを目的として拠出した積立金であり、一時これを原告の右簿外仮名預金に受け入れたにすぎず、その後従業員の親睦のため支出しているので、原告の雑収入ではないと主張する。しかし、原告の預金口座に入金されたものは、特段の反証がなされない限り、原告に帰属していたものと推定されるべきであるところ、右原告主張事実についてはこれを裏付けるに足りる的確な証拠はない。

のみならず、被告は、当期の所得金額から減算すべきことが当事者間に争いのない表(七)III23(事実欄第三の二2(二三))において、右原告の簿外仮名預金である石川和枝名義普通預金から出金された三六万〇二五七円を原告の福利厚生費として認容しているのであるから、もし仮に、右預金に入金された五万一八四三円が原告主張のとおりの趣旨のものであつたとすれば、右預金からの出金である表(七)III23の三六万〇二五七円のうち五万一八四三円は原告の損金を構成しないものとしてこれを控除すべき筋合であるが、本件においては右三六万〇二五七円全額を原告の損金として減算しているので、右過大減算を補正する意味において、右預金に受け入れられた五万一八四三円を計算上益金に加算すべきこととなる。

(三) したがつて、いずれにしても雑収入計上もれの合計額は三八万七六五六円となる。

4  諸会費の否認額三四万八四〇〇円(表(七)II8)

(一) 原告が昭和三九年二月一〇日函館海産物取引所に三四万八四〇〇円を納付し、これを損金に計上したこと及び右三四万八四〇〇円が右取引所における商品取引の違約損失補償準備金に充てるために支出されたものであることは、当事者間に争いがない。

(二) 被告は、右三四万八四〇〇円は出資金として資産に計上すべきものと主張するが、成立に争いのない甲第五号証の一、三によれば、右取引所の違約損失補償準備金は、商品市場における売買取引において会員が違約をし他の会員に損失を与えた場合にその違約をした会員が業務規程で定める方法により賠償してもなお賠償できない部分の金額を補てんするため、取引所が会員から徴収した特別会費によつて積み立てるものであること、右違約損失補償準備金には旧準備金と新準備金の二種があり、昭和三九年三月三一日現在における原告の各準備金充当のための支払金額は、旧準備金のための第二加入特別会費が三四万五〇〇〇円、新準備金のための第一加入特別会費が三五〇〇円であること、違約損失補償準備金が一定の累積限度額を超えたときは、その超えた部分に相当する金額は旧準備金から取り崩され、各会員の納入に係る旧納入額(昭和三四年九月三〇日以前の規定による旧準備金の積み立てに係る特別会費の納入額)と全会員の納入に係る旧納入額を基礎として算出した額によつて各会員に交付され、旧準備金を取り崩しても、なお残余があるときは、新準備金が取り崩されるが、その取り崩された金額は一般会計に繰り入れられること、会員が脱退したとき等は、当該会員に対し旧準備金のうちから交付金が交付されるが、その者の違約により違約損失の補てんがなされた場合には、交付金の一部又は全部が交付されないことがあること、右交付金の額は、当該会員の納入に係る旧納入額の範囲内において、交付の理由が発生した日の前日の旧準備金の額と当該会員の納入に係る旧納入額とを基礎として算出されること、しかし、新準備金については、会員の脱退等の場合にこれが返還される旨の定めはないことを認めることができ、更に、前記甲第五号証の三によれば、右取引所には違約損失補償準備金のほかに通常の出資金があり、原告は一口五万円の出資をしていることが認められる。

右認定事実によれば、違約損失補償準備金は、通常の出資金とは異なり、会員に生じた違約損失について会員相互で危険を分散するための資金であつて、これに充てるための特別会費は一種の損害保険料に類する性格をもつものといえるのであり、しかも、新準備金に充てられた第一加入特別会費は一切返還されず、旧準備金に充てられた第二加入特別会費も、将来その全額が当然に返還されるわけではなく、累積限度額を超えたとき又は脱退したときなどに一部が還元されることがあるにすぎないというのであるから、これらの特別会費を出資金又はこれと同視すべきものとみることはできないといわなければならない。

(三) そうすると、右違約損失補償準備金に充てるために支出された三四万八四〇〇円は、他にこれを資産に計上すべき根拠の主張立証のない以上、損金として処理しうるものである。

5  諸雑費の否認額七〇〇万円(表(七)II9)

(一) 原告が衆議院議員であつた大上司に対し仮払税金名義で昭和三八年一〇月八日三〇〇万円、同月一七日四〇〇万円合計七〇〇万円を支出し、これを昭和三九年六月三〇日諸雑費に科目振替をしたうえ、当期の損金に計上していたことは、当事者間に争いがない。

(二) ところで、被告は、右七〇〇万円は東京北辰の設立運動の謝礼として支出されたものであると主張するが、前掲甲第二三号証(竹藤敦徳及び田村健二の証言部分)、乙第三一号証、成立に争いのない乙第二八号証、証人元岡正嘉、同遠藤登芽夫(第二回)、同江角高明(第一回)、同田村健二(第一回)及び同久富寿一の各証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告から大上司に支払われた右七〇〇万円は、東京北辰設立の運動に対する謝礼のほかに、当時原告が多額の税を滞納していた(このことは、当事者間に争いがない。)ことから、右滞納税の延期、免除の交渉方を大上に依頼し、これを引き受けてもらつたことに対する謝礼としての意味や、その他一般的に政治家との繋りを深めるといつた意味などをも含めた政治献金であつたことが認められ、右認定に反する前記証人遠藤及び同田村の各証言は採用することができない。

(三) そうであるとすれば、政治献金は旧法人税法九条三項所定の寄付金に当たり、旧法人税法施行規則七条一項により寄付金の損金算入限度額を算定しなければならないところ、右限度額が九八万〇五六三円であることは争いがないので、原告が大上司に支払つた七〇〇万円のうち右九八万〇五六三円を超える六〇一万九四三六円は損金に算入されないこととなる。

6  受取利息計上もれ二一五万五三八六円(表(七)II10)

(一) 別表五の番号1、6、7、9ないし12、18、19が北内正男に対する仮払金であること及び別表六の番号1、3、4、7ないし9、14、16、18ないし20(ただし、9、16、18については数額の点を除く。)が同人からの仮受金であることは当事者間に争いがないので、以下原告が争う出入金について、順次判断する。

(二) 仮払金関係(別表五)

(1) 別表五の番号2(昭和三八年七月九日の八〇〇万円)

同        3(昭和三八年七月二二日の一〇万二九一〇円)

同        4(昭和三八年七月二二日の二〇〇万円)

前掲甲第二号証の一、第二三号証(弘中温子の証言部分)、成立に争いのない乙第一七号証の一、証人江角高明(第二回)の証言により真正に成立したと認められる甲第四六号証、証人遠藤登芽夫(第三回)の証言により真正に成立したと認められる乙第六三ないし第六五号証、第六七号証並びに証人遠藤登芽夫(第二、三回)及び同田村健二(第一回)の各証言によれば、昭和三八年七月九日原告の簿外仮名預金(保田隆司名義)から引き出された八〇〇万円は同日協和銀行下関支店の無記名定期預金として預け入れられ、同月二二日これを担保に北内正男名義で同銀行から借り受けられた八〇〇万円と右簿外仮名預金から引き出された二〇〇万円合計一〇〇〇万円は、同月二五日設立された東京北辰(資本金五〇〇〇万円)の出資金に充てられたこと、その後、同銀行からの右借入金と無記名定期預金とは相殺されていることが認められるところ、前掲乙第一七号証の一、成立に争いのない乙第一七号証の二、三、第五七号証によれば、北内正男は、原告の法人税法違反嫌疑事件の調査において、東京北辰の出資金五〇〇〇万円のうち一〇〇〇万円は自分が出資したと供述していること、東京北辰の設立申告書には、北内正男が発起人並びに株主として名前をつらねていることが認められる。

右事実によれば、原告の簿外預金から引き出された八〇〇万円と二〇〇万円は北内に対する仮払金と認めるのが相当であり、これに反する証人江角高明(第一回)及び同田村健二(第一回)の各証言並びに前掲甲第二三号証(江角高明、弘中温子及び田村健二の各証言部分)はたやすく措信することはできず、原本の存在と成立に争いのない甲第一八号証も右認定を左右するに足りない。また、甲第一五号証の一、第一七号証は、単に原告の主張をまとめた表にすぎず、これをもつて右認定を左右するに足る証拠ということのできないことはもとよりである。

もつとも、原告は、東京北辰の株式を有していたのは北内個人ではなく下関北辰であると主張し、その証拠として甲第四三号証の一ないし三、第四四号証の一、二、第四五号証の一ないし四を提出しているが、これらの証拠は東京北辰の昭和四二年以降の株主又は配当金支払関係等を示すものであつて、これによつて本件係争年度当時の事情を認定することはできない。

次に、前掲甲第二号証の一、第二三号証(弘中温子の証言部分)、第四六号証、証人遠藤登芽夫(第三回)の証言により真正に成立したと認められる乙第六六号証並びに証人遠藤登芽夫(第二回)及び同田村健二(第一回)の各証言によれば、昭和三八年七月二二日原告の簿外仮名預金(保田隆司名義)から引き出された一〇万二九一〇円は北内正男が協和銀行下関支店から借り入れた前記八〇〇万円の支払利息等であることが認められるので、これが北内に対する仮払金であることはいうまでもないところである。

以上のとおりであるから、別表五の番号2(八〇〇万円)、同3(一〇万二九一〇円)及び同4(二〇〇万円)は、いずれも北内に対する仮払金と認められる。

(2) 別表五の番号5(昭和三八年八月二二日の五七万六六六七円)

前掲甲第二号証の一、成立に争いのない乙第六八号証の一、二並びに弁論の全趣旨によれば、原告が北内正男から立替金の入金があつたものとして公表帳簿に受け入れた五七万六六六七円(処理上の日付は昭和三八年八月二〇日)は原告の架空顧客口座(保田幸司)委託者証拠金から払い出された五七万七〇〇〇円(処理上の日付は同月二二日)によつて充当されている(残額三三三円は原告の簿外仮名預金(保田隆司名義)に入金されている。)ことが認められる。

ところで、原告は、右五七万六六六七円は原告が川棚観光ゴルフ場の会員権を取得したときの代金であると主張し、証人田村健二(第一回)もこれにそう証言をするけれども、前掲甲第二三号証(田村健二の証言部分)によれば、川棚観光ゴルフ場の会員となれるのは個人に限られ、法人は会員となれないことが認められる(したがつて、会員権は北内正男個人に帰属したと推認される。)ので、これに五七万六六六七円が北内正男の立替金の入金として処理されていることを併わせ考えると、右立替金五七万六六六七円は北内が川棚観光ゴルフ場の会員権を取得したときの代金であつたと認められる。

そうであるとすれば、右代金は原告の簿外資金から埋め合わされているのであるから、その埋め合わせに使用された五七万六六六七円は、原告の北内に対する仮払金と認めるべきである。

(3) 別表五の番号8(昭和三八年一〇月一一日の二一万円)

前掲甲第二三号証(弘中温子、田村健二の各証言部分)、乙第二八号証、成立に争いのない甲第一号証、第三九号証、乙第四六号証、証人遠藤登芽夫(第三回)の証言により真正に成立したと認められる乙第六九号証並びに証人遠藤登芽夫(第二回)及び同田村健二(第一回)の各証言によれば、原告の簿外仮名預金(今井静夫名義)から引き出された二一万円は、北内正男が全国穀物取引仲買人協会連合会主催の欧州、ソ連穀物取引所視察旅行に参加した際、その費用の一部として同人に支払われたこと、しかし、右旅行の費用として別途公表帳簿から旅費一二四万三三九九円が支出されていることが認められる。ところで、公表帳簿から正式に支出されたもの以外に何故簿外から旅行費用の一部を支出したかについて田村健二は、前掲甲第二三号証において、当時原告には海外旅行規程がなかつたので、公表帳簿より支出しても税務当局から否認されると思つたからであると供述するが、その費用の性格については、弘中温子は、甲第二三号証において、日当、滞在費といい、証人田村健二(第一回)は支度金、日当、昼食代あるいは同業者へのおみやげ代と証言し、必ずしも一様ではない。

そこで、以上の点を総合して考えると、前記視察旅行自体は原告の業務に関連するものであるにしても、右二一万円は、それがことさら簿外資金から支出され、公表帳簿から支出すれば税務当局から否認されるおそれがあつたというのであるから、それは視察旅行に直接必要とする費用として課税上当然に経費と認められる性格のものではなく、むしろ旅行の際における北内の個人的消費の費用に充てるために支出されたものと推認され、右推認を覆すに足りる確かな証拠はない。そうすると、右二一万円は北内に対する仮払金と認めるべきであり、これに反する前掲甲第二三号証(弘中温子及び田村健二の証言部分)及び証人田村健二(第一回)の証言は採用することができない。

(4) 別表五の番号13(昭和三八年一二月二五日の二五万円)

前掲甲第一、第二三(田村健二の証言部分)、第四六号証、成立に争いのない乙第四七号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第二〇号証の二ないし四並びに証人田村健二(第一回)の証言によれば、右二五万円は、昭和三八年一二月二五日原告の簿外仮名預金(井上操名義)から引き出された一三八万円のうち大山茂行外二名の立替金の入金があつたものとして公表帳簿に受け入れられた一一三万円の残額であること、簿外の金銭出納帳には、右一三八万円は「引出社長」と記載されていること、原告の法人税法違反嫌疑事件の調査において、当時原告の財務課長であつた田村健二は、右二五万円は北内正男がなにかに使つたものと思うと述べていることが認められる。そして、前掲甲第二三号証(田村健二の証言部分)及び証人田村健二(第一回)の証言によれば、田村健二は、北内正男の所得税法違反被告事件の審理及び本件訴訟において、後で北内から右二五万円の使途をきいたところ、後記(8)の一七〇万一〇〇〇円のうちの二〇万一〇〇〇円(合計四五万一〇〇〇円)とともに、昭和三八年の年末から翌年の年始にかけて金沢で行つた役員の家族の慰安を兼ねた役員会議に要した費用のうち領収証のとれなかつた分であるということであつたと証言する。しかし、前掲甲第二三号証(田村健二の証言部分)、成立に争いのない乙第一五号証の六、第二三号証の一ないし四並びに証人田村健二(第一回)の証言によれば、原告は、右会議費のため別に四五万九五〇〇円を公表帳簿から支出し、これを旅費、宿泊費に費消していることが認められるのであり、領収証のとれなかつた費用であるとはいえ、右旅費、宿泊費以外に更に前記二五万円を含めた四五万一〇〇〇円が役員会議のため具体的にどのような使途に費消されたものであるかは、本件全証拠によつても明らかでない。

そうであるとすれば、北内の名で引き出された前記二五万円が原告の事業上直接必要な費用に使用されたとする証拠はないこととなり、結局、右二五万円は北内に対する仮払金と認めるほかはなく、これに反する甲第二三号証(田村健二の証言部分)、証人田村健二(第一回)の証言は採用することができない。なお、甲第一六号証は原告の主張にそつて支出の明細を明らかにしたものにすぎず、これをもつて右認定を左右することのできないことは、甲第一五号証の一、第一七、第二二号証と同様である。

(5) 別表五の番号14(昭和三八年一二月二五日の一二一万三三九八円)

前掲甲第一、第四六号証、乙第四七号証によれば、右一二一万三三九八円は簿外資金の金銭出納帳の「今井静夫」欄に記載のある昭和三八年一二月二五日の「常務三五万円」「東京六九万三三九八円」「?一七万円」の各出金の合計額をいうものと認められるが、本件全証拠によつても、右一二一万三三九八円が北内正男に仮払いされたものであることを認めるに足りる証拠はない。もつとも、前掲甲第四六号証には、「一七万円」の欄に「北内へ出金」と記載されているが、証人江角高明(第二回)の証言によれば、甲第四六号証は、北内正男の所得税法違反被告事件について担当検察官が調査の結果に基づく自己の判断を一覧表にしたものであることが認められるのであるから、甲第四六号証に右のような記載のあることのみをもつて、右一七万円が北内に対する仮払金と認めることはできない。

(6) 別表五の番号15(昭和三八年一二月二七日の一〇九万三〇四〇円)

前掲甲第一、第二三(弘中温子及び田村健二の証言部分)、第四六号証、証人遠藤登芽夫(第三回)の証言によつて真正に成立したと認められる乙第七〇号証の一及び成立に争いのない同号証の二並びに証人遠藤登芽夫(第二回)及び同田村健二(第一回)の各証言によれば、昭和三八年一二月二七日原告の簿外仮名預金(井上操名義)から引き出された六九万三五四〇円は公表帳簿に北内正男からの立替金の入金として受け入れられていること、また、同日右預金から引き出された三九万九五〇〇円も北内が東京に行く際、公表帳簿に記載することなく同人に支出した分を埋め合わせるために簿外資金から公表資金に移し替えられたものであることが認められる。

ところで、証人田村健二(第一回)は、右六九万三五四〇円と三九万九五〇〇円との合計額一〇九万三〇四〇円は北内が原告に代わつて立て替えていた東京北辰設立のための費用のうち領収証のとれなかつた分を整理したものであると証言し、前掲甲第二三号証(田村健二の証言部分)もこれに符合するが、右甲第二三号証によれば、北内が東京北辰の設立費用を原告に代わつて立て替えていたというのは、北内からの話若しくは同人が作成した明細書に基づくものにすぎないというのであるから、実際に北内が東京北辰の設立費用を支払つたというには、なお客観的裏付けが乏しいものというべきである。のみならず、仮に、北内が東京北辰の設立費用を支出していたとしても、前記(1)のとおり、同人は東京北辰の出資者兼発起人でもあつたのであるから、その支出した費用が当然に原告の負担すべきものであつたということもできない。

そうすると、右一〇九万三〇四〇円が東京北辰の設立費用であるとする原告の主張は採用しがたく、右一〇九万三〇四〇円は北内に対する仮払金と認めるべきである。

(7) 別表五の番号16(昭和三八年一二月二七日の一〇〇万円)

被告は右一〇〇万円は北内正男に対する仮払金であると主張するのに対し、原告は後記(8)の一七〇万一〇〇〇円のうちの一五〇万円(合計二五〇万円)とともに北内に対する簿外の役員賞与であると主張するところ、前掲甲第一号証によれば、簿外資金の金銭出納帳には、右一〇〇万円は「社長渡(定キ)」と記載されているにすぎず、また、前掲乙第四六号証によれば、田村健二は、原告の法人税法違反嫌疑事件の調査において、簿外賞与は支出していないと供述していることが認められる。これらの事実と、同一人に対する賞与の支給が二口の出金によつてされているのは不自然の感を免れないことを考えると、原告の主張にそう前掲甲第一五号証の一、第一六、第二二号証、第二三号証(田村健二の証言部分)及び証人田村健二(第一回)の証言はたやすく採用しがたいものといわざるをえない。

そうであれば、右一〇〇万円は北内に対する仮払金と認めるべきである。

(8) 別表五の番号17(昭和三八年一二月二七日の一七〇万一〇〇〇円)

原告は、右一七〇万一〇〇〇円について、被告が北内正男に対する仮払金と主張するのに対し、一五〇万円は北内に対する簿外賞与であり、残額二〇万一〇〇〇円は前記(4)の二五万円と同様に金沢での役員会議の費用であると主張する。

前掲甲第一号証によれば、右一七〇万一〇〇〇円の簿外資金の金銭出納帳上の記載は前記(7)の一〇〇万円と同様であり、うち一五〇万円が簿外賞与であるかどうかについての証拠関係も(7)と共通であるから、原告の主張を認めることはできない。また、残額二〇万一〇〇〇円については、前記(4)の二五万円について認定したことがここにおいても妥当するので、結局、一七〇万一〇〇〇円全額を北内に対する仮払金と認めるべきである。

(9) 別表五の番号20(昭和三九年三月二三日の三五〇万円)

同        22(昭和三九年四月 三日の二五〇万円)

同        24(昭和三九年四月一四日の二八万七〇〇〇円)

同        25(昭和三九年四月一四日の四四一万三〇〇〇円)

同        26(昭和三九年四月一四日の五三〇万円)

同        27(昭和三九年四月二四日の三八〇万円)

同        28(昭和三九年四月二八日の二〇万円)

以上合計 二〇〇〇万円

被告は、右二〇〇〇万円は北内正男の日産商品に対する出資金に充てられたものであるから、同人に対する仮払金であると主張するのに対し、原告は、右二〇〇〇万円のうち五〇〇万円は専務取締役竹藤敦徳の退職金であり、残額一五〇〇万円は原告の日産商品に対する出資金であると主張し、前掲甲第二三号証(江角高明、竹藤敦徳及び田村健二の各証言部分)、証人江角高明(第一回)の証言により真正に成立したと認められる甲第八、第九号証並びに証人江角高明(第一回)、同田村健二(第一回)及び同久富寿一の各証言は、これに符合するものである。

ところで、前掲甲第二三号証(田村健二の証言部分)、乙第三一号証、成立に争いのない乙第三三号証、証人江角高明(第一回)、同田村健二(第一回)の各証言及び弁論の全趣旨によれば、原告は北内正男と竹藤敦徳が中心的な出資者となつている会社であつたが、日産商品が設立されてからは、竹藤は日産商品の代表者に就任し、原告の経営から離れることになつたこと、日産商品の資本金二〇〇〇万円は原告の簿外資金から支出されたが、これにつき北内は、原告の法人税法違反嫌疑事件の調査において、右二〇〇〇万円は自分が個人として出してやつたものである旨を供述していることが認められる。右事実からすれば、右二〇〇〇万円は原告自身が自己の事業のために日産商品に出資したものとは認められず、むしろ北内が、原告の経営から手を引くこととなつた竹藤のために個人として原告の簿外資金から二〇〇〇万円の出資金を提供したもの(すなわち、北内が原告の簿外資金を個人的に利用したもの)とみるのが相当である。前掲甲第八、第九号証には、右二〇〇〇万円のうち五〇〇万円が原告から竹藤に対する退職金、一五〇〇万円が原告から日産商品に対する出資金であるかのように記載されているが、前掲乙第三三号証と対比すると単に形式を整えるためのものと認めるに妨げなく、その他右認定に牴触する前掲各証拠はいずれも採用することができない。

したがつて、右二〇〇〇万円は、北内に対する仮払金というべきである。

(10) 別表五の番号21(昭和三九年三月二八日の七〇万円)

前掲甲第四六号証、乙第五七号証、成立に争いのない乙第五六号証の一ないし三並びに証人遠藤登芽夫(第三回)の証言によれば、昭和三九年三月二六日原告の架空顧客(玉井歯科)口座から一二〇万円が払い出されていること、そして、同月二八日北内正男の仮名預金である協和銀行下関支店の山近正夫名義普通預金に七〇万円が入金されていることが認められるが、これらの出入金が時期的に近接しているとはいえ、右七〇万円が前記一二〇万円の一部であることを認めるに足りる的確な証拠はない。

そうすると、右七〇万円を北内に対する仮払金と認めることはできない。

(11) 別表五の番号23(昭和三九年四月一三日の三〇〇万円)

右三〇〇万円が北辰貿易の出資金に充てられたものであることは当事者間に争いがないところ、被告はその出資者は北内正男であるというのに対し、原告は原告自身であると主張する。

前掲乙第三三号証によれば、北内は、原告の法人税法違反嫌疑事件の調査において北辰貿易の出資者は自分であると供述していることが認められ、また、成立に争いのない乙第一六号証の一ないし三によれば、北内は北辰貿易の法人設立申告書に発起人兼株主として名を連ねていることが認められる。これらの事実を勘案すると、北辰貿易に三〇〇万円を出資したのは北内であつたと認めるのが相当であり、これに反する甲第二三号証(江角高明、田村健二の各証言部分)並びに証人江角高明(第一回)及び同田村健二(第一回)の各証言はたやすく措信することができない。

そうであるとすれば、北辰貿易の出資金に充てられた三〇〇万円は北内に対する仮払金と認めるべきである。

(三) 仮受金関係(別表六)

(1) 別表六の番号2(昭和三八年一一月二五日の一〇万円)

同        5(昭和三九年二月 四日の三〇万円)

同        6(昭和三九年三月 七日の三万〇五〇〇円)

同        10(昭和三九年三月三一日の五万円)

同        11(昭和三九年三月三一日の五〇万円)

同        12(昭和三九年三月三一日の二〇万円)

同        13(昭和三九年四月 二日の一八万七〇〇〇円)

同        15(昭和三九年四月一〇日の一一万五〇〇〇円)

同        17(昭和三九年四月一五日の一万一七〇〇円)

以上の原告への入金について、被告は、北内正男の資金から入金される以外にその資金源泉は見当たらないので、同人からの仮受金と主張するが、これを認めるに足りる確かな証拠はない。しかし、被告が原告の有利に右仮受金の存在を是認している以上、裁判所としてもこれを採用することが相当である。

(2) 別表六の番号9(昭和三九年三月二三日の三五〇万円)

右三五〇万円が北内からの仮受金であることは当事者間に争いがないが、原告は、実際の仮受金額は三九〇万円であると主張する。ところで、証人遠藤登芽夫(第三回)の証言により真正に成立したと認められる乙第七三号証及び証人田村健二(第一回)の証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和三九年三月二三日北内から大和銀行日本橋支店の原告の簿外仮名当座預金(大山茂行名義)に三九〇万円の送金を受け、同日その全額を払い出していること、そして、右払い出した三九〇万円のうち三五〇万円が別表五の番号20に該当すること、被告は、右三五〇万円が北内の日産商品への出資金に充てられたと判断したため前記仮名当座預金に入金されたもののうち三五〇万円を北内からの仮受金とし、残額四〇万円についてはその使途が不明であることから仮受金とは認めなかつたことが認められる。しかし、右四〇万円についても、北内が原告の仮名当座預金口座を単に一時的に利用したにすぎないというような特段の事情でもあれば格別、そうでない限りは、原告の口座に北内から入金があつた以上、たとえその使途が不明であつたとしても、それだけでこれを北内からの仮受金ではないとする理由はない。

そうであれば、原告の簿外当座預金に入金のあつた前記三九〇万円は、その全額を北内からの仮受金と認めるべきである。

(3) 別表六の番号16(昭和三九年四月一三日の三〇〇万円)

原告は、右仮受金は正しくは三五〇万円であると主張するところ、被告の認める右三〇〇万円は、前掲甲第二三号証(江角高明の証言部分)、成立に争いのない乙第七四号証、証人田村健二(第一回)の証言及び弁論の全趣旨によれば、北内正男が大和銀行札幌支店から同行日本橋支店の原告の簿外仮名預金(高橋宏誌名義)に昭和三九年四月一一日送金した三五〇万円のうちの一部で前記(二)(11)のとおり北内に仮払いされたものであることが明らかである(被告の主張によれば、仮受けの日付けは同月一三日となつているが、同月一一日の誤りと認められる。)。

そうすると、残額五〇万円の使途が不明であつたとしても、前記の理由により北内からの仮受金額は三五〇万円と認めるべきである。

(4) 別表六の番号18(昭和三九年四月二一日の一六二万二七一八円)

原告は、右仮受金は正しくは三一五万円であると主張するところ、前掲甲第二三号証(田村健二の証言部分)、第四六号証、乙第四七号証、証人田村健二(第一回)の証言及び弁論の全趣旨によれば、昭和三九年四月二一日原告の架空顧客(山下貢)口座に三一五万円の入金があり、被告が仮受けを認めた一六二万二七一八円はその一部であることが認められるが、右一六二万二七一八円とその余とで資金源泉を異にしていたと認めるに足りる証拠はない。そうであるとすれば、前者を北内からの仮受金と認める以上、後者についても同様にみるのが相当である。

したがつて、右仮受金額は原告主張のとおり三一五万円と認められる。

(5) 原告が別途主張する仮受金(昭和三九年六月二七日の二五〇万円)

原告は、山本勝也より原告の株式を買い受けるため北内正男から昭和三九年六月二七日二五〇万円を仮受けていると主張し、証人田村健二(第一回)の証言はこれにそうものであるが、他にこれを裏付ける客観的証拠はなく、むしろ前掲乙第三一号証によれば、田村健二は、原告の法人税法違反嫌疑事件の調査において、右株式の買取代金は架空顧客口座から出金していると供述していることからすると、右証人田村の証言はたやすく措信することはできない。

したがつて、別表六以外に二五〇万円の仮受金があつたとの原告の主張は採用しない。

(四) 認定利息

当期における北内正男に対する仮払金、仮受金の認定は以上のとおりであるから、その差額については、特別の事情のない限り前記第二の一3と同様のいわゆる認定利息の発生を認めるべきである。

ところで、被告は、当期においても右認定利息の計算方法として月末平均残高法を採用しているが、当期においては前記のとおり一事業年度にわたり仮払い、仮受けが頻繁に行われており、その差額は常時変動していると認められるので、前記第二の一3で述べた理由からしても、当期については月末平均残高法を採用することは必ずしも不合理ではないというべきである。

そこで、前記認定した仮払金と仮受金をもとに月毎にその差額を算出し、これについて月末平均残高法により年一割の利率で原告の受け取るべき利息相当額を計算すると、次表のとおり一九九万七二五五円となり、右金額は当期の益金に加算されるべきである。

年月

貸付金額(円)

昭和三八年七月末

一〇、九三五、九一〇

八月末

一三、一六一、二七七

九月末

一三、一六一、二七七

一〇月末

一四、九七一、二七七

一一月末

一五、七七一、二七七

一二月末

二一、二九〇、三一七

昭和三九月一月末

二一、五〇七、八七七

二月末

二一、二〇七、八七七

三月末

二〇、〇一四、一二七

四月末

三〇、〇四九、八二七

五月末

三〇、〇四九、八二七

六月末

二七、五四九、八二七

合計<ア>

二三九、六七〇、六九七

月末平均残高(<ア>×1/12) 一九、九七二、五五八円

認定利息 一、九九七、二五五円(一九、九七二、五五八×〇・一)

7  貸倒損の否認額四五七万五五〇〇円(表(七)II11)

(一) 原告が函館営業所の顧客河村沢治の委託者未収金四五七万五五〇〇円を債権放棄を理由に貸倒損に計上していたことは当事者間に争いがない。しかし、河村が当時函館トヨペツト株式会社の代表取締役で個人資産が相当あつたことは当事者間に争いがないから、無資力とはいえないし、また、前掲乙第四〇号証、成立に争いのない甲第六号証並びに証人江角高明(第一回)及び同田村健二(第一回)の各証言によれば、原告においては、顧客に対する債権を放棄するときは、内容証明郵便でその旨を顧客に通知する習わしであるにもかかわらず、河村に対する委託者未収金については、そのような放棄の意思表示をすることなく、単に原告の一方的な内部処理として当期の決算において右委託者未収金を債権放棄したことにして貸倒損に計上したにすぎないことが認められる。これに反する証人久富寿一の証言は措信できない。

(二) ところで、原告は、河村に対する委託者未収金を請求しないことにしたのは、右未収金に関する同人との委託取引上の紛議を解決するためであり、本来なら雑損として処理することができたものであると主張する。確かに、前掲甲第六号証並びに証人江角高明(第一回)、同田村健二(第一回)及び同久富寿一の各証言によれば、河村は原告の函館営業所長であつた天野富士雄が自分の委託なく勝手に取引をしたとして未収金の支払いに応じない態度を示していたことが認められる。しかし、前掲甲第六号証の河村の供述によつても、同人が無断取引であつたと主張する取引が同人の意思に基づかないものであると断定することはできないのみならず、証人江角高明(第一回)の証言によれば、原告としては、右取引がはつきりと原告の責任であるとまでは確定できなかつたものの、河村からの苦情が表面化すると困るので、債権放棄という形で右未収金を処理したことが認められるのであつて、本件全証拠によつても、右未収金が河村に対して請求できないものであつたということはできないのである。しかも、証人江角高明(第一、二回)の証言によれば、そうした商品仲買人と顧客との紛議にそなえて委託者紛議合同審査委員会、紛議調停委員会という機関が設けられていることが認められるが、原告がこうした紛議処理機関を利用した形跡は認めることができない。そうすると、右未収金は課税上当然に雑損として認められるものではないというべきである。

したがつて、河村に対する未収金を損金として認めることはできない。

8  雑損失の否認額三八九万四七〇〇円(表(七)II12)

(一) 原告が元函館営業所長矢野富士雄に対する貸付金三八九万四七〇〇円を同人の所在不明を理由に雑損失として当期の損金に計上していたことは、当事者間に争いがなく、前掲甲第六号証、乙第三一号証並びに証人江角高明(第一、二回)、同田村健二(第一回)及び同久富寿一の各証言によれば、矢野は昭和三九年六月ころは所在不明であつたことが認められる(被告が、当時矢野が所在不明ではなかつたことの証拠として提出した乙第八一号証の一ないし三によれば、原告の松山営業所から社長宛に同年一〇月の日付になる荒井弘外数名からの矢野宛の領収書が送付されていることが窺われるが、証人江角高明(第二回)の証言によれば、それは、矢野が松山営業所勤務当時顧客との間で商品取引について紛議を起こしたことがあり、その顧客が矢野が所在不明となつたため原告に苦情を持ち込んできたので、原告がその責任を感じて矢野に代わつて若干の金員をその顧客に送つた際の領収書であることが認められるのであるから、右領収書のあることをもつて矢野が昭和三九年六月ころ所在不明でなかつたということはできない。)。

しかし、債務者が所在不明になつたとしても、その債権が課税上回収不能として損金に認められるには、債権者として通常講ずべき手段を尽したにもかかわらずなお所在が判明せず客観的に回収不能であると認めざるをえない場合であることが必要であり、債務者が所在不明になつたからといつて直ちにその債権を損金に計上することが認められるわけではない。ところで、前掲各証拠並びに証人元岡正嘉及び同遠藤登芽夫(第二回)の各証言と弁論の全趣旨によれば、矢野は原告の代表取締役北内正男の妻の兄であり、同人のした経理上の不正が発覚したため昭和三九年春ころから所在をくらましたこと、また、矢野は松山営業所から函館営業所に移るときにも、一時行方不明になつたことがあり、今回も原告としては一通りのこと以上の格別の所在探索の方策は講じていないことが認められるのであり、右事実によれば、原告が、矢野が所在不明となつた後わずか二か月程で同人に対する貸付金を回収不能とみて損金に計上したのは時期尚早というべきであつて、当期において損金に計上することは許されないといわなければならない。

(二) これに対し、原告は、矢野は当時資産収入がまつたくなかつたと主張し、証人江角高明(第一回)の証言はこれにそうものであるが、右証言は客観的裏付けを欠くものであつてたやすく措信しがたく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。また、原告は、矢野に対する三八九万四七〇〇円はもともと貸付金ではなく、同人が顧客との間で起こした取引上の紛議から回収困難となつた委託未収金を同人に対する立替金という形で処理していたものであるといい、あたかも右金額は本来原告が負担すべきものであつたかの如く主張する。しかし、これにそう前掲乙第三一号証並びに証人江角高明(第一、二回)、同田村健二(第一回)及び同久富寿一の各証言によつても、右貸付金とされている金額が何故に顧客との間で原告が当然に負担しなければならないものであつたのか、あるいはまた仮にそうであつたとしても、何故に原告が矢野に対して求償しえない性格のものであつたのか、その具体的根拠が定かでなく、他にこれを認めるに足りる証拠もない。そうすると、原告の右主張は根拠を欠くものとして採用することはできない。更に、原告は、仮に右金額が貸付金であつたとしても、矢野に対する退職金と精算しているので、損金であることには変わりがないとも主張する。しかし、原告がそのような経理をしていないことは明らかであるのみならず、成立に争いのない乙第三五号証によれば、当時原告には退職金制度は設けられていなかつたことが認められ(甲第七号証をみても、原告が退職金支給規程を設けたのは昭和四二年九月一日であることが明らかである。)、証人江角高明(第二回)も矢野に退職金を支給したかどうか分らないと証言しているのであつて、原告の右主張は到底採用できない。

9  雑損の否認一六万九二一三円(表(七)II13)

(一) 被告が主張する雑損の否認(事実欄第三の二2(一三)(1)ないし(3))のうち(2)の電信電話債権の売却損四万二二一三円及び(3)の登記過怠による過料二万七〇〇〇円がいずれも損金に計上できないものであることは、当事者間に争いがない。

(二) 同(1)については、原告が神戸穀物取引所に納付した加入金一〇万円を雑損として損金に計上したことは当事者間に争いがない。しかし、成立に争いのない乙第一九号証の一ないし三によれば、右取引所の定款一三四条には「会員加入の承認を受けたものは、出資金とともに本所が総会の決議により定めた加入金を本所に納入しなければならない。」と規定されていることが認められるところ、成立に争いのない乙第二〇号証の一ないし五並びに証人江角高明(第一回)及び同遠藤登芽夫(第二回)の各証言によれば、右取引所においては、右加入金を貸借対照表の貸方に掲げており、会員が退会するときにはその加入金を出資金とともに返還していることが認められる。そうであれば、原告が右取引所に納入した加入金一〇万円は、出資金と同じ性格のものというべきであり、損金とならないことは明らかである。

(三) そうすると、右一〇万円と損金に計上できないことが当事者間に争いがない前記(一)の六万九二一三円(電信電話債権の売却損四万二二一三円と過料二万七〇〇〇円)との合計額一六万九二一三円は、益金に加算すべきである。

10  交際費限度超過額一四万五六六八円(表(七)II14)

(一) 原告が別表七、八記載の支出を会議費及び諸雑費として損金に計上していたことは、当事者間に争いがない。

(二) ところで、前掲乙第三四号証、成立に争いのない乙第一五号証の一ないし一五並びに証人遠藤登芽夫(第二回)の証言によれば、原告の法人税法違反嫌疑事件において、広島国税局の担当者が別表七、八記載の支出について調査したところ、右支出は交際費であると思われたので、これを一覧表にして当時原告の財務課長であつた田村健二に意見を求めたところ、同人は右一覧表を検討したうえ、右支出はいずれも交際費に当たることを認めたことが認められ、右事実によると、別表七、八記載の支出はその全額が交際費に該当すると推認される。

これに対し、証人田村健二(第一回)は、別表七の会議費の中には従業員の会議のための宿泊費が五〇万円以上含まれているので、出張旅費として認めるべきであると証言するが、その明細及び根拠は不明であつて(証人田村健二(第一回)の証言により真正に成立したと認められる甲第一二号証によれば、別表七の「昭和三八年七月二九日四万円 幹部会議費(小天狗)」については、一二人分の飲食宿泊費が三万七〇二五円であることが認められるが、これとても、右飲食宿泊の趣旨は定かではない。)、前記の認定を左右しうるものではなく、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

(三) そうすると、別表七、八の支出合計七二万八四三八円は交際費と認めるべきであり、当事者間に争いのないその他の交際費の申告額を加えて昭和四〇年法律第三二号による改正前の租税特別措置法六二条の規定により損金算入額を計算すると、一四万五六六八円の限度で原告の損金経理は過大であつたこととなる。

11  差金勘定認容額の否認額一六〇三万二二七九円(表(七)II17)

(一) 原告が昭和三九年六月二七日差金勘定について値洗いを行い、その結果が正確であつたかどうかは別にして、右差金の値洗額が六四三六万四一〇九円であつたこと、右金額は総勘定元帳差金勘定の帳簿残高と一致しなかつたが、原告がすでに課税済の過年度操作差金五六六三万一九二〇円及び当期の商品売買益三五一万八九〇〇円を当期の公表帳簿に受け入れたところ、値洗額と帳簿残高はほぼ一致したこと(実際には完全に一致したとみるべきこと後記のとおりである。)、右課税済の過年度操作差金を公表帳簿に受け入れたことに伴い、原告が重複課税を理由に五六六三万一九二〇円を申告所得金額から差し引いたことは、当事者間に争いがない。右事実によると、五六六三万一九二〇円と三五一万八九〇〇円との合計額六〇一五万〇八二〇円は簿外差金であつたということになるところ、証人遠藤登芽夫(第三回)及び同久富寿一の各証言並びに弁論の全趣旨によれば、右六〇一五万〇八二〇円の簿外差金は、建玉を手仕舞する際本来なら清算差金の益として借方に振り替えるべきであつた差金勘定をそうした仕訳をすることなく発生差金の益としての仕訳のまま貸方に残存させていたことによつて生じたものであることが認められる。

(二) ところで、原告にはすでに課税済の過年度操作差金五六六三万一九二〇円のあつたことは当事者間に争いがないところ、被告は、右過年度操作差金のうち一六〇三万二二七九円は昭和三八年六月期に取り崩されており、当期において公表帳簿に受入れを認容できるのは四〇五九万九六四一円であると主張するので、まず、この点から判断する。

成立に争いのない乙第二九号証は昭和三七年九月二九日付の原告の振替伝票であるが、これによると、

借方 差金勘定   一六〇三万二二七九円

委託者未収金  一六二万四八〇〇円

貸方 委託者証拠金 一五四四万三八四九円

委託者未払金  二二一万三二三〇円

という仕訳によつて差金勘定が委託者証拠金及び同未払金に振り替えられていることが認められる。そして、右委託者証拠金、同未収金及び同未払金の金額は、原告が昭和三七年上半期及び昭和三八年六月期における河村正美外一〇口の架空口座に係る商品売買益の内訳を明らかにした際引用した別表一〇の※の金額(昭和三七年上半期の右河村正美等の名義の委託者証拠金、同未収金及び同未払金の金額)と完全に一致する。そうすると、右のような架空口座を用いて商品取引をした場合の通常の仕訳の仕方として、昭和三七年上半期分についても、委託者証拠金や委託者未払金は証拠金又は差金に関する元帳の貸方に計上され、委託者未収金はその借方に計上されていた(委託者未払金、委託者未収金の相手勘定は差金勘定である。)はずであるから、その後である昭和三七年九月二九日に至り振替伝票(乙第二九号証)によつて再び前記のような仕訳がなされたということは、同日以前にいつたん右振替伝票とは逆の仕訳がなされ、右委託者証拠金等は会計帳簿から除外され差金として処理されていたのが、右振替伝票によつて再度会計帳簿に計上されたこととなるところ、右架空名義の委託者証拠金等は昭和三七年上半期に係るものであるから、その相手勘定である差金も過年度操作差金の一部からなるものと認められる。右事実に証人元岡正嘉及び同遠藤登芽夫(第二、三回)の各証言を併わせ考えると、原告は、昭和三八年六月期に属する昭和三七年九月二九日において過年度操作差金のうち一六〇三万二二七九円を架空の委託者証拠金、同未払金に振り替え、過年度操作差金をそれだけ取り崩したものであると認めるのが相当である。このことは、前掲乙第一号証の三及び原本の存在と成立に争いのない乙第九一号証の一ないし四によつて河村正美外一〇口座に係る架空の委託者証拠金のうち河村正美、末森準一、川越勇、刈谷寿夫、川野義正、染谷節子名義で五九六万三九三六円及び架空の委託者未払金のうち川越勇名義で三万六〇六四円合計六〇〇万円が昭和三八年六月期に払い出されていることからも裏付けられるところである(乙第九一号証の三の「計算金」とは、証人田村健二(第二回)の証言によれば、委託者未払金を意味するものであることが明らかである。)。

これに対し、原告は、前記振替伝票に記載のある差金一六〇三万二二七九円は総勘定元帳差金勘定に記帳されておらず、右金額を取り崩したことにはならないと主張する。確かに、原告が昭和三八年六月期の総勘定元帳差金勘定として提出した甲第二九号証の一を見ると、昭和三七年九月二九日の借方欄には一六〇三万二二七九円の記帳はされていないことが認められる。しかし、同じく原告の昭和三八年六月期の総勘定元帳委託者証拠金勘定である甲第二九号証の二を見ると、昭和三七年九月二九日の貸方欄に前記振替伝票の委託者証拠金のとおり一五四四万三八四九円が記帳されていることが認められ、また、証人田村健二(第二回)の証言によれば、前記振替伝票に記載されている委託者未払金二二一万三二三〇円と委託者未収金一六二万四八〇〇円については両者の差額五八万八四三〇円が甲第二九号証の三の総勘定元帳委託者勘定(これは委託者の損益勘定を示すものである。)の昭和三七年九月二九日の貸方欄一六九万〇七四八円の一部として記帳されているというのであり、これからすると、前記振替伝票の差金勘定についてのみ総勘定元帳差金勘定に一六〇三万二二七九円の記帳のないことは、到底理解しがたいところである。これについて、証人田村健二(第二回)は、委託者証拠金は主務省の監査があり、法定帳簿と一致させておく必要があつたので転記したが、差金勘定はそうした必要がなかつたので記帳しなかつたと証言する。しかし、これは複式簿記の原則をまつたく無視するもので、かかる記帳をすれば総勘定元帳の貸借は不一致となり、簿記の意味は失われるのであつて、右証言は措信することができない。要するに、乙第二九号証の振替伝票が存在し、かつ、総勘定元帳の委託者証拠金勘定、委託者勘定に右伝票に符合する転記がある以上、その相手勘定である総勘定元帳差金勘定に右伝票に基づく転記がされなかつたということは通常ありえないことなのであつて、本件全証拠をもつてしても、原告において特に異例が行われたことを首肯せしめるに足りる事情は認めがたい。右総勘定元帳差金勘定の昭和三七年九月二六日借方欄に一六〇三万二二七九円の記帳がないのは、その金額が同帳簿の通常の記帳額より一桁多い(甲第二九号証の一によれば、昭和三七年九月分の記帳額は、その大部分が一〇〇万円台であり、一〇〇〇万円台はない。)ことから、伝票どおり記帳すると、それが目立つて不正経理が容易に発見されるおそれがある等の理由により、右一六〇三万二二七九円を少額に分割し、これを他の日に振り替えるとか、その他同帳簿についてなんらかの操作が行われたためであるとみるよりほかはない。したがつて、甲第二九号証の一の総勘定元帳差金勘定に一六〇三万二二七九円の記帳の見当らないことをもつて、原告が過年度操作差金のうち一六〇三万二二七九円を取り崩したとの前記認定を左右することはできず、右認定に反する証人田村健二(第一、二回)及び同久富寿一の各証言は採用できない。

そうであるとすれば、過年度操作差金五六六三万一九二〇円のうち一六〇三万二二七九円は昭和三八年六月期に取り崩されており、当期において受入れ可能な右差金の繰越分は四〇五九万九六四一円であつたにもかかわらず、成立に争いのない甲第一九号証によれば、原告が当期末において過年度操作差金を公表帳簿に受け入れる際の仕訳は、

借方 差金勘定 五六六三万一九二〇円

貸方 雑益   五六六三万一九二〇円

としていることが認められるのであるから、右過年度操作差金のうちすでに取り崩されて他の資産等に転化した一六〇三万二二七九円はそれとしては未だ公表帳簿に受け入れられていないことになる反面、公表帳簿に受け入れられた過年度操作差金五六六三万一九二〇円のうち右一六〇三万二二七九円は過年度操作差金そのものの繰越分ではなかつたことになるというべきである。

(三) 前記のとおり、原告が値洗額と帳簿残高との差額を埋め合わせるために計上した差金勘定のうち一六〇三万二二七九円は過年度操作差金の繰越分ではなかつたことになるが、被告は、右一六〇三万二二七九円は原告の当期の商品売買益に外ならないと主張するので、次にこの点について判断する。

前記(一)の事実から、一六〇三万二二七九円を総勘定元帳差金勘定の借方に計上しなければ、前記値洗額と帳簿残高とが一致しないことは明らかである。したがつて、右一六〇三万二二七九円は、本来手仕舞の際借方に計上すべきであつた差金であるということになるところ、証人遠藤登芽夫(第三回)の証言及び弁論の全趣旨によれば、原告の差金帳簿には自己分の差金と委託者分の差金とが混然と記帳されていることが認められるが、委託者分の差金はこれを正確に記帳しなければ、委託者に対する債権債務を確定できないので、委託者の建玉を手仕舞う際の仕訳は正しく行われたものと推定されるところから、右一六〇三万二二七九円は原告自身の取引に係る商品売買益すなわち簿外差金であると認められる。

そこで、右商品売買益が当期の発生に係るものであるか否かについてみるのに、その点に関する直接の具体的証拠は存しないが(証人遠藤登芽夫(第一、二回)の証言は明確を欠く。)、右簿外差金は、昭和三九年六月二七日の値洗いによつてはじめて発覚したものであり、後記認定のとおり原告自身、右値洗額から過年度操作差金及び帳簿差金を控除したもの(原告の計算では三五一万八九〇〇円)を当期の商品売買益として申告しているのであるから、同じ経理方法により右過年度操作差金の当期繰越額の誤りを是正して得られた前記一六〇三万二二七九円についても、それが他の事業年度の発生に係るものであることの立証がない限り、当期の利益とみるほかないものというべきである。

(四) ところで、原告は、右商品売買益計上もれ一六〇三万二二七九円を算出する基礎とした差金の値洗額六四三六万四一〇九円、差金勘定の帳簿借方残高四二一万三二八九円、過年度操作差金の公表帳簿受入額四〇五九万九六四一円、当期商品売買益の公表帳簿受入額三五一万八九〇〇円につき、右各金額はいずれも正確ではないと主張しているので、以下これについて検討することとする。

(1) 値洗額

原告は、<ア>差金の値洗いは昭和三九年六月二七日付で行つており、当期末の同月三〇日現在のものではないところ、被告はその間の調整として六七万九六〇〇円を減算しているが、これは建玉の異動による委託者差金、自己差金の全然考慮しておらず不十分である、<イ>値洗いの結果それ自体に計算等の誤りがあり、当初の値洗額六四三六万四一〇九円は正当な金額より三五九万一〇〇〇円過大である、と主張する。しかし、<ア>については、前掲乙第三一号証によれば、六月二七日付の値洗額を期末の同月三〇日現在のそれに引き直すために六七万九六〇〇円を減算したのは原告自身であり、被告はこれをそのまま認容していることが認められるのであるから、もし、六九万九六〇〇円が値洗調整額として不十分というのであれば、原告において正当な調整額を主張立証すべきであるのに、原告はなんらこれを主張立証していないのであつて、六七万九六〇〇円が調整額として不十分であるとの原告の主張は失当である。また、<イ>については、原告は昭和三九年六月二七日の値洗いの結果を表わしたものであるとして甲第一四号証の値洗表を提出するとともに、それの誤謬を正した資料として甲第四〇号証を提出し、証人江角高明(第一、二回)、同田村健二(第一、二回)及び同久富寿一の各証言も原告の主張に符合する。しかし、証人江角高明(第二回)は、昭和四一年春ころ田村から値洗額に誤りがあるのではないかといわれて、そのころ値洗表を検討しなおしたと証言するのに対し、証人田村健二(第二回)は値洗額に誤りがあるのが分つたのは昭和四七年ころであつたと証言し、相互に矛盾があるのみならず、前掲乙第三一号証によれば、田村健二は、原告の法人税法違反嫌疑事件の調査において、調査担当者に対し、値洗表を見ながら「自己分はこの表に明細(商品毎)を書いているとおり合計二二万三二〇〇円であり」と述べていることが認められるが、本訴において原告から値洗表として提出された甲第一四号証を見ると、そこに記載されている原告分の合計額は二三七万九五〇〇円となり(右甲号証中上部欄外に「自己」と捺印のある頁が原告分の取引を記載したものであることは、証人江角高明(第二回)の証言によつて認められる。)、右金額と一致しないのであり、かかる点からすると、本訴において提出された甲第一四号証の値洗表は当初作成された値洗表とは別のものと認められるのであつて、その別のものについて誤謬を指摘して当初の値洗額は誤りであつたとする前記甲第四〇号証及び証人江角らの証言は到底採用することができない。むしろ、前掲乙第三一号証、成立に争いのない乙第三二号証並びに証人元岡正嘉及び同遠藤登芽夫(第二、三回)の各証言によれば、昭和四〇年ころ、田村健二、江角高明は、ともに値洗額六四三六万四一〇九円は正確な数字であると述べていたことが認められることからして、右金額は正当な値洗額と認めるべきであり、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

(2) 帳簿残高

原告は、値洗日当日の差金勘定の帳簿残高が借方四二一万三二八九円でなかつた証拠として甲第三〇号証の一(当期の総勘定元帳差金勘定)を提出し、同号証を検すると、確かに昭和三九年六月二七日現在の帳簿残高は貸方四〇〇六万二九六一円であり、過年度操作差金等の帳簿受入れ直前(同月二九日)の残高も貸方三六七二万〇二六一円となつていることが認められる。

しかし、差金の値洗いは、実際に生じた差金の額を把握し、それが差金勘定の記帳額と一致するかどうかを確認するために行うものであるが、前掲乙第三二号証並びに証人江角高明(第一回)及び同田村健二(第二回)の各証言によれば、原告が行つた値洗いも、差金勘定の記帳が出鱈目であつたことから、これを正すためであつたことが認められるのであるから、値洗い後においては、原告の差金勘定の帳簿残額は値洗額と一致するように正しく仕訳しなおされたものと推定される。原告は、六〇一五万〇八二〇円(五六六三万一九二〇円+三五一万八九〇〇円)を公表帳簿に受け入れたところ、帳簿残高は値洗額とほぼ一致したと主張するが、ほぼ一致したのではなく、完全に一致したはずである。けだし、ほぼ一致したというのでは、総勘定元帳は依然として不正確のままということになり、値洗いをした意味が失われるからである。そうすると、総勘定元帳差金勘定の六月二七日当時の帳簿残高は値洗額六四三六万四一〇九円から原告が公表帳簿に受け入れた六〇一五万〇八二〇円を差し引いた四二一万三二八九円であつたというべきである。原告が提出した甲第三〇号証の一の帳簿残高が貸方四〇〇六万二九六一円となつているのは、原告の主張及び証人田村健二(第一回)の証言(昭和三九年六月期の決算前における帳簿上の差金残は約五〇〇万円であつたとの証言)とも一致しないのであつて不可解というほかなく、これだけを根拠にして差金勘定の帳簿残高が四二一万三二八九円ではなかつたということはできない。

(3) 公表帳簿に受け入れられた過年度操作差金

公表帳簿に受入認容となる過年度操作差金が五六六三万一九二〇円ではなく、四〇五九万九六四一円であることは、すでに前記(二)で述べたとおりである。

(4) 公表帳簿に受け入れられた商品売買益

原告は、三五一万八九〇〇円を公表帳簿に受け入れたのは、差金勘定の帳尻を合わせるためではなく、総勘定元帳売買損益勘定と自己売買損益表とを一致させるためであつたが、後日検討したところ、自己売買損益表の期首繰越金額に誤りがあり、公表帳簿受入額は二六一万五五〇〇円過大であつたと主張し、証人田村健二(第二回)も甲第三〇号証の五(売買損益勘定)、第三一号証の一ないし四(自己売買損益表)に基づいてこれにそう証言をする。しかし、甲第三〇号証の五と甲第三一号証の一とを比較検討しても、売買損益勘定の方が三五一万八九〇〇円少なかつたということは窺い知ることができないのであり、同金額が売買損益勘定と自己売買損益表との差から生じたとの原告の主張及び右証人田村の証言はたやすく措信しがたい。かえつて、前掲乙第三一号証によると、田村健二は、原告の法人税法違反嫌疑事件の調査において、三五一万八九〇〇円を商品売買益として加算したのは、値洗額と差金勘定の帳簿残高との差を埋めるためであつた旨を供述していることが認められるのであり、前記のとおり原告としては値洗額と帳簿残高を一致させる必要があつたことからすると、右供述こそ真実を物語るものとみるべきである。

(五) 以上のとおりであるから、当期において原告には一六〇三万二二七九円の商品売買益の計上もれがあつたと認められる。

原告は、五六六三万一九二〇円を雑益として公表帳簿に受け入れた以上、右全額について減額が認められるべきであると主張するが、公表帳簿に受け入れられた過年度操作差金は前記のとおり四〇五九万九六四一円にすぎなかつたのであつて、原告が二重課税を回避するために行つた申告減算(原告が申告所得金額から五六六三万一九二〇円を減算したことは、当事者間に争いがない。)は一六〇三万二二七九円の過大となり、被告が公表帳簿受入れを一六〇三万二二七九円否認したことに伴い雑益勘定に過大に計上されることになつた一六〇三万二二七九円は、右過大減算によつて差引零となり、改めて減算する必要のないことは明らかである。

12  固定資産認定損の否認額三九五万六三四八円(表(七)II18)

(一) 原告が当期において固定資産認定損三九五万六三四八円を益金から減算していることは、当事者間に争いがない。

(二) 前掲乙第二八、第三五号証及び証人久富寿一の証言によれば、原告の顧問税理士久富寿一は、原告の各営業所、支店にある車両等について調査したところ、所在不明等のものが相当数あるとの報告を受けたことから、当期決算後において、総勘定元帳に記載されている車両運搬具、什器備品の価額合計額から自己が調査して得た額を差し引いたところ、三九五万六三四八円となつたので、これを固定資産認定損として申告減算したことが窺われる。しかし、右乙第三五号証及び証人遠藤登芽夫(第一回)の証言によれば、久富税理士が調査して得た額は、例えば、車両の期中取得価額についてみても、総勘定元帳の記帳額と比較して三八二万九五三〇円もの差額があつたにもかかわらず、久富税理士はそうしたことにまつたく気付いておらず、したがつてその原因についてもなんら検討していなかつたことが認められるのであり、かかる点からすると、久富税理士の行つた調査は極めて杜撰であり、正確性に乏しいものというべきである。そうすると、原告のした固定資産認定損三九五万六三四八円の申告減算は、合理的根拠と正確性を欠くものであつて、これが否認されるべきことは当然である。

13  減価償却超過額の当期認容額七万二二九〇円(表七III19)

原告が昭和三八年六月期において損金に算入していた別表一の店舗改造費及び絵画、額縁の取得代金のうち八五万九八二五円を前記第二の一1のとおり減価償却超過額としてその損金算入を否認しているので、右金額のうち当期における減価償却費七万二三九〇円は損金に算入すべきである。

14  事業税の認容損一一〇万七六六〇円(表(七)III22)

原告の昭和三八年六月期の所得金額を一一四二万一七八二円と更正した本件更正処分(一)は前記第一の三のとおり適法であるから、本件更正処分(一)による増差所得金額に対する未納事業税額一一〇万七六六〇円は当期の損金に算入すべきである。

二  昭和三九年六月期における簿外経費

原告は、当期において簿外資金から一七一八万二二一〇円の営業経費を支出していると主張するので、これについて判断する。

1  北辰貿易設立費用五〇万円(事実欄第五の四1)

証人田村健二(第一回)は、北内正男から原告の簿外仮名預金(高橋宏誌名義)に三五〇万円の送金を受け、このうち三〇〇万円は北辰貿易の出資金にあて、残額五〇万円をその設立費用として支出したと証言する。しかし、前記一6(二)(11)で認定したとおり北辰貿易の出資者は北内正男個人であり、前掲乙第一六号証の一ないし三によれば、原告はその発起人にもなつていないことが認められるのであるから、原告が北辰貿易の設立費用を負担するいわれはないといわなければならない。したがつて、仮に原告の簿外預金に送金された三五〇万円のうち五〇万円が北辰貿易の設立費用として支出されたとしても、右五〇万円を原告が負担するいわれがない以上、これを原告の経費とすることはできない。

2  リクリエーシヨン費三万八〇〇〇円(同2)

原告の主張によれば、右リクリエーシヨン費三万八〇〇〇円は原告の簿外預金である石川和枝名義普通預金から昭和三八年一〇月一一日引き出したものであるというのであるが、被告は、同預金から同日引き出された二三万円全額を福利厚生費として原告の経費に認めている(事実欄第三の二(二三)及び別表九参照)ので、原告の主張する三万八〇〇〇円は右二三万円の中に含まれていると認められ、右認定に反する証拠もないので、三万八〇〇〇円を原告の経費として認めることはできない。

3  借入利息等一〇万二九一〇円(同3)

原告は、右一〇万二九一〇円は東京北辰の出資金に充てるため協和銀行下関支店から八〇〇万円を借り受けたことに伴う利息等であると主張するが、これは、前記一6(二)(1)で認定したとおり北内正男に対する仮払金であり、原告の経費ではない。

4  欧州旅行費二一万円(同4)

原告の主張によれば、右二一万円は北内正男が欧州の商品取引所の視察旅行を行つた際の費用の一部であるというのであるが、これは、前記一6(二)(3)で認定したとおり北内に対する仮払金であり、原告の経費ではない。

5  役員旅行及び会議費四五万一〇〇〇円(同5)

原告は、右四五万一〇〇〇円は役員及びその家族の慰安旅行を兼ねて行つた役員会議の費用の一部であると主張するが、前記一6(二)(4)(8)で認定したとおり、右四五万一〇〇〇円は北内に対する仮払金であり原告の経費ではない。

6  オーストラリア旅行費四〇万円(同6)

証人田村健二(第一回)は、原告の取締役大山茂行がオーストラリアの羊毛取引所の視察旅行に行つた際、その費用として簿外資金から四〇万円を支出したと証言するが、仮にそうであつたとしても、同証言によれば、右視察旅行の旅費、宿泊費は公表帳簿からも別に支出していることが認められるのであり、何故右旅費等のほかに簿外から四〇万円を支出したかについては、羊毛取引所の会に加入するについて現地の人といろいろ折衝するために金が必要であつたというだけで、右証言によつてもその具体的使途、必要性は定かでなく、他にこれを明らかにする証拠もない。

そうであるとすれば、右四〇万円がことさら簿外から支出されていることからしても、それが原告の業務にとつて直接必要な経費であつたとはいいがたく、これを原告の経費として認めることはできない。

7  送金料六〇〇円(同7)

原告は、右六〇〇円は佐々木英雄外二名の名義で第一銀行下関支店から同行兜町支店に一四〇〇万円を送金した際の送金料であると主張し、前掲甲第四六号証によれば、昭和三九年四月一四日欄に「東京送金 六〇〇 送金料か」との記載のあることが認められるが、成立に争いのない乙第六二号証によれば、第一銀行下関支店は、原告が同行を通じて送金する際は無料としていたことが認められ、六〇〇円を送金料として同行に支払つたとの原告の主張は、これを認めることができない。なお、原告は、仮名で送金したので送金料を支払つたと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

8  東京北辰設立費用二八五万八〇四〇円(同8)

原告が簿外資金から東京北辰設立のため一七六万五〇〇〇円を支出したことは、当事者間に争いがない。原告は、そのほかにも一〇九万三〇四〇円を簿外より支出したと主張するところ、弁論の全趣旨によれば、右一〇九万三〇四〇円は別表五の番号15の一〇九万三〇四〇円を指すものと認められるが、これは前記一6(二)(6)で認定したとおり北内に対する仮払金であるから、原告の右主張は失当である。

また、東京北辰設立のために支出されたことに争いのない一七六万五〇〇〇円についても、原告(下関北辰)は合併前は東京北辰と法人格を異にしていたのであるし、前掲乙第一七号証の一ないし三によれば、原告は東京北辰設立の発起人になつていたわけでもないことが認められるのであるから、原告が東京北辰の設立費用を負担するいわれは存しないといわなければならない(東京北辰が当初は原告(下関北辰)の東京支店として設置が計画され、その後に原告の独立の子会社として設立されたものである関係上、右の支店設置実現のための費用や東京北辰の資本金の一部を原告が出資しているとしても、支店の設置準備が結局において別会社設立に移行したのであるから、それまでの費用は、会社の設立費用に含まれるものとして、定款において設立される会社の負担に帰すべきものと記載されたもの以外は発起人が負担すべき筋合のものである。)。してみれば、前記一七六万五〇〇〇円も原告の経費として認めることができない。

9  役員賞与五二八万円(同9)

原告は、北内正男(代表取締役)に二五〇万円、竹藤敦徳(専務取締役)に一三〇万円、大山茂行(常務取締役)に九六万円をそれぞれ役員報酬として、また、木塚昭義(取締役部長)に三二万円、高橋宏誌(取締役部長)に二〇万円をそれぞれ使用人賞与として支給したと主張する。

しかし、弁論の全趣旨によれば、北内に支払つたと主張する二五〇万円は別表五の番号16の一〇〇万円及び同17の一七〇万一〇〇〇円のうちの一五〇万円を指すものと認められるが、これは、前記一6(二)(7)(8)で認定したとおり北内に対する役員賞与ではなく仮払金と認められるものである。また、その余の竹藤外三名に対する支給については、甲第一六、第二二号証、第二三号証(田村健二、弘中温子、竹藤敦徳の各証言部分)及び証人田村健二(第一回)の証言中に原告の主張に符合する部分があるが、前掲乙第四六号証によれば、田村健二は、原告の法人税法違反嫌疑事件の調査において、簿外の給与や賞与は支出していない旨供述していることが認められることと対比すると、たやすく措信することができず、他に右支給の事実を確認するに足りる証拠はない。

のみならず、仮に原告主張のような金額が支払われていたとしても、次に述べるとおり、それはいずれも損金とすることのできないものである。すなわち、原告の主張によれば、北内、竹藤、大山に対する支給分はいずれも昭和三八年の年末に一度に支払われたというのであるから、それは役員報酬ではなく役員賞与と認められ、前記第二の二1で述べたと同様の理由により損金に算入できないものであるし、更に、木塚と高橋は使用人兼務役員であるから、同人らに対する賞与が簿外資金より支出され損金経理がされていない以上、それを損金とすることができないことは、すでに前記第二の二1で述べたところである。

10  歩合的交際費二〇四万一六六〇円(同10)

原告は、当期において昭和三八年六月期と同様の趣旨で歩合的交際費二〇四万一六六〇円を支出したと主張するが、仮にそうであつたとしても、本件全証拠によるも、その具体的使途は明らかでないのであるから、前記第二の二2(二)で述べた理由により、これを損金とすることはできない。

11  給与三〇万円(同11)

原告は、竹藤敦徳に昭和三九年三月分の給与として三〇万円を支払つたと主張するが、原告の主張によれば、竹藤は同年二月末日をもつて原告を退社したというのであるから、退職した者に退職後の給与を支給するいわれはないといわなければならない。証人田村健二(第一回)は、竹藤が事務引継のため数日出社したので三〇万円を支払つたと証言するが、そのような支出としては多額にすぎ首肯できない。したがつて、仮に原告が竹藤に三〇万円を支払つたとしても、それは同人に対する寄付金と認めるほかないが、当期においては、すでに前記一5で述べたとおり、寄付金の損金に算入される限度額を超過しているのであるから、右三〇万円を損金に算入することはできない。

12  退職金五〇〇万円(同12)

原告が専務取締役であつた竹藤敦徳に退職金として五〇〇万円を支給したことの証拠として甲第八号証があるが、これは日産商品の設立に関連する北内正男への仮払金について形式を整えるためのものとみるべきことは、すでに前記一6(二)(9)で認定したとおりである。

のみならず、仮に右退職金を支給したとしても、それは簿外から支出され損金経理がされていないのであるから、旧法人税法施行規則一〇条の五の規定により損金として認めることはできないといわなければならない。

三  本件更正処分(二)の適否

以上認定したところに従つて原告の昭和三九年六月期の所得金額を計算すると、原告の申告額である欠損六五一万三四五二円に加算すべきものは表(七)IIの1ないし7、11ないし18掲記の金額並びに9のうち六〇一万九四三六円及び10のうち一九九万七二五五円であり、減算すべきものは同表IIIの19ないし24掲記の金額であるので、右によつて得られる所得金額は七一九七万三一四九円であるところ、本件更正処分(二)の認定した額は七三二一万七九九七円であり、一二四万四八四八円過大であるから、本件更正処分(二)はこの限度で取消しを免れない。

第四結論

以上のとおりであつて、原告の本訴請求は、本件更正処分(二)が原告の昭和三九年六月期の所得金額を七一九七万三一四九円を超えて認定した部分については理由があるが、その余の請求は理由がないので、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 佐藤繁 川崎和夫 菊池洋一)

別表一~一〇<省略>

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